公募研究
長野県・菅平高原(約45km2)を対象地域とした。2023・2024年度の2年間で、この地域内でスキー場の草原及びそこに隣接する森林の計37地点を選定した。草原・森林の維管束植物200種以上を対象に5器官(根圏土壌・根・枯葉・葉・繁殖器官)の採集を行った(計約2000サンプル)。真菌はITSプライマー、細菌は16Sプライマーを用いて次世代シーケンサー MiSeq(イルミナ社) によるDNAメタバーコーディングを行う準備を進めた。調査地点には1×20 mのトランセクトを設置し、出現する維管束植物種と環境要因(地形・pH・地質)を記録した。これらの植物から約50の真菌株を分離培養して2種の培地を用いて発酵生産を行い、検定生物として真菌2種・細菌4種に発酵生産物を供試して抗微生物活性を評価することができた。草原・森林の各7地点で100平方mの植生調査を行うとともに、草原1地点では1haまでの植生調査を行って、いずれも出現した維管束植物種を全て記録した。以上のデータより、植物種数-面積関係、真菌種数-植物種数関係をもとに真菌種数-面積関係を求めた。そこに、真菌種あたりの抗微生物活性の保持割合を実値で与え、保持していた場合の成功率と成功した場合の利益・開発費用の値を文献から得ることで、真菌の持つ創薬材料遺伝資源価値-面積関係を求めた。また、真菌と放線菌の検出種数の比や、抗微生物活性保持率の比を用い、放線菌を含めた遺伝資源価値も試算した。草原は小さな面積での植物種数・微生物種数・遺伝資源価値が森林よりもはるかに高かった。森林では植物・微生物の地点間のベータ多様性が高く、1haの面積での遺伝資源価値は草原をやや上回った。しかし、生息地に依存している遺伝資源価値や、遺伝資源価値の減少速度は草原で大きく、遺伝資源の側面から見たときに草原を保全する重要性が高いことが示された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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