研究領域 | デジタルバイオスフェア:地球環境を守るための統合生物圏科学 |
研究課題/領域番号 |
22H05718
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
飯尾 淳弘 静岡大学, 農学部, 准教授 (90422740)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 幹呼吸 / 内部CO2フラックス / 樹液流 / 樹種多様性 |
研究実績の概要 |
幹呼吸(RS)は外部へ放出されるCO2フラックス(EA)に等しいと仮定した研究が多いが、呼吸で発生したCO2の一部は外へ放出されずに樹液によって輸送される。しかし、そうした幹内部のCO2フラックスを定量した研究は少なく、幹呼吸の定量と予測を困難にしている。目的は樹種による幹内部CO2フラックスの違いとその要因を明らかにすることである。 生活型の大きく異なる5種(スギ、コナラ、クスノキ、タブノキ、シラカシ)について、EAに加えて、マスバランス法を用いて樹液流に輸送されるフラックス(FT)と幹内の貯留フラックス(DS)を定量し、内部フラックスを考慮した呼吸速度(RS)を推定した。具体的には幹に深さ3~4cmの穴を開け、その内部CO2濃度と温度、樹液のpH、辺材の樹液流束密度と密度、含水率を測定した。 FTの割合は樹種によって大きく異なり、クスノキではRSの50%を占める一方で、スギでは10%以下であった。全体的には、EAが大きい種ほど内部CO2濃度が高く、FTも大きくなる傾向が見られた。しかし、CO2拡散抵抗(内部CO2濃度とEAの関係の傾き)にも大きな種間差が見られ、拡散抵抗の高い種ではEAが小さくとも幹内部にCO2が蓄積することでFTが大きくなり、RSを過少評価することがわかった。また、呼吸の温度応答に関しては、樹液流が活発にある日中にFTが大きくなるため、EAの変化は温度変化と一致せず、温度とEAの関係は大きなヒステリシスを描いた。この傾向はどの種でも見られ、内部フラックスを考慮しないと幹呼吸の温度応答を正しく評価できないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
使用を予定していたCO2プローブの到着が遅れ、またメーカーによってプローブの形状変更が行われたため、測定システムにアレンジを加える必要が生じ、実験の開始が遅れた。当初は幹に直接CO2プローブを挿入して辺材内CO2濃度を計測する予定であったが、プローブが大きくなったために幹内部からプローブへCO2を誘導するためのアタッチメントを作成した。3個体の同時測定が可能なシステムを構築し、9月から12月までその検証を行い、その後、コナラ、タブノキ、クスノキ、シラカシ、スギの幹CO2フラックスを計測した。当初の計画より実験開始が遅れたが、樹種差について最低限のデータは取得できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
測定システムを拡張して同時に測定できる個体数を増やし、データの蓄積を進める。また、辺材内CO2濃度や樹液流束密度の幹内変化の大きな種や個体もあったことから、1個体について方位別の計測を行い、それらの幹内変化と呼吸速度推定に与える影響を評価する。11月まで計測を行い、それ以降はデータ解析に専念する。
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