本研究では、インターネット上で複数の人間が共創行為を行う場面を取り上げ、共創をもたらす条件を繰り返しの実験を通じて定量的に評価、検討することを目的とする。 具体的には、一般のテキスト情報ベースのCGMシステムに加え、研究代表者が開発したアニメ版WikipediaシステムAnimepediaによるアニメ制作(百科事典の各アイテムを写真やイラストを含めたアニメ映像として複数ユーザ間で制作する)をも対象に含め、共創効果を定量的に評価、検討し、共創効果の定量化ならびに共創効果を高めるための方策について検討を行った。特に、研究代表者が提唱している「共創モデル」ならびにこのモデルに基づく「共創曲線」という仮説に対し、多様な実験条件のもとで共創効果の定量化と、実験条件の違いによって生じる共創効果の差異について検討を行った。以上の結果、多くの実験条件下で、共創モデルならびに共創曲線の存在を実証することができた。しかしながら、テキスト情報ベースのCGMシステム、アニメ版WikipediaシステムAnimepediaによる共創曲線の差異はもちろんのこと、同一システム(例えばAnimepediaシステム)を用いた場合でも条件(題材が創作系の場合と事実列挙系の場合など)によりその共創曲線に差異が生じた。実験結果よりこの差異は「制作の容易さ」に大きく依存している傾向が読み取れ、制作が容易なシステム、題材ほど共創曲線のカーブが急勾配になる傾向があることが明らかになった。 以上の成果は、今後のソーシャルメディアサービス、グループウェア設計、さらにはIT時代の組織論に至るまで多様な場面での応用が可能な基礎知識となりえるものである。
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