研究領域 | 実験社会科学 |
研究課題/領域番号 |
23011006
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
南本 敬史 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, チームリーダー (50506813)
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研究分担者 |
山田 洋 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, モデル動物開発研究部, 室長 (70453115)
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キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / 経済理論 / 認知科学 / モデル化 |
研究概要 |
効用関数(あるいは価値関数)は主体の価値観を定量的に表現するための数理モデルである。これまでの心理学や行動経済学の研究において、選択行動を用いた実験によって、効用関数の推定・定量がなされてきたが、これでは主体の"選好"のみ定量され、主体の欲求といった内的状態の変化を定量することはできない。一方これまでに、サルの水分摂取の欲求とそれを獲得するための動機づけ行動を詳しく調べ、主体の欲求といった内的状態の変化を定量した"飽和関数"を効用関数に付加した"拡張効用関数"を提唱し、動機づけ行動を説明しうることを示した(南本ら2009)。本研究は、拡張効用関数のヒト動機付け行動への一般化を目的とする。H23年度は拡張効用関数のおける飽和関数の一般化を目的とした。動機付け行動課題を遂行中の2頭サルを対象に、水を報酬とした行動課題中に採血を行い、脱水の生理指標である血中浸透圧を測定し(山田ら2010)、行動データから推定される飽和関数F(S)と実際の生体の飽和の程度(脱水の程度)の関係を詳しく調べた。血中浸透圧濃度は獲得した水報酬の量に従って減少し、その変化パターンは個体内ではセッションをまたいで有意な違いはなく、個体間では異なった。また採血した前後20分間の動物のパフォーマンスから、脱水度が高いと動機付けが高いという関係が得られた。さらにセッション内での動機付けの変化は、個体ごとの浸透圧濃度の変動パターンを用いても、飽和関数と同程度に説明できた。つまり、水報酬を獲得する動機付け行動は、脱水の程度で調節されている可能性を示唆し、飽和関数による動機付けの説明が生理学的に妥当であることを示唆する。このことは拡張効用関数が水分以外の欲求に対しても一般化しうる可能性を示し、動機付け行動制御の脳メカニズム解明やヒトの社会行動のモデル化に寄与するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、H23年度に飽和関数の生理妥当性の検証実験を実施し、論文発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトの動機付け行動を説明できるような、より一般化されたモデルを構築するために、(1)ヒトの行動データの取得とそのモデル化、(2)これまでの結果のより局所的なモデル化、の2項目について研究を進める方針である。
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