研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
23012003
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
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キーワード | actin / auxin / meristem / isovariant / hormone / cross-talk / cytokinin / ethylene |
研究概要 |
このプロジェクトはアクチンアイソバリアントがどのように根端メリステムの発達を制御しているのかということについての細胞メカニズムを理解することに焦点をあてたものである。このことを理解するために、23年度には、栄養生長過程で働いているアクチンアイソバリアントの単一および二重変異体を用いて、生理学的そして細胞生物学的特徴化を行った。その結果、細胞内アクチンが根端メリステムの発達を制御していることが明らかになった。さらに、ACT7とACT8が主根と側根のメリステム発達過程において異なった役割を果たしていることも明らかになった。オーキシンは両者のプロセスで主要な働きをしていることがわかっていることから、我々は局所的オーキシン勾配を調節することによってアクチンアイソバリアントが細胞内オーキシン応答を制御しているのではないかという仮説を打ち立てた。この仮説を証明するために、各々のアクチン変異体にオーキシン応答マーカーを組み込んだ後で、これらの変異体の細胞内オーキシン応答を調べた。その結果は、根の生長における解析データと一致しており、細胞オーキシン勾配を調節することにおいてアクチンアイソバリアントが異なった役割を果たすことを観察した。根端で観察されたオーキシンの最大量がactでは大きく減少していることから、ACT7アイソバリアントは根のメリステムにおいて適切なオーキシン最大量を維持するのに必要であるということが示唆された。一方で、actでは根端においてオーキシンの最大量に変化は見られないことから、ACT7とACT8の機能は別々にオーキシン応答を調節しているという考えが証明された。細胞内オーキシン勾配を調節する排出輸送体と取り込み輸送体の細胞膜局在と細胞内トラフィッキングの解析によって、当研究室ではACT7とACT8は独立してこれらの輸送体を調節していることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度に行った研究の進展は期待どおりであり、現在ではアクチンアイソバリアント変異体を特徴づけることができた。また、アクチン変異体にさまざまな植物ホルモン応答マーカーを組み込んだ複数のトランスジェニック体を作ることに成功し、また交配によって少なくともそれぞれ2つのT3のホモ個体を得ることができた。加えて、細胞内オーキシン恒常性を観察するためのトランスジェニック体を作った。
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今後の研究の推進方策 |
アクチンアイソバリアント変異体におけるオーキシンの分布は、この変異体における根の表現型はオーキシントランスポートが変化したことに起因することを強く示唆している。この可能性を検証するために、先行研究(Shibasaki et al., 2009 ; Rahman et al., 2010)の方法にのっとり、標識されたオーキシンを用いて直接オーキシントランスポートを測定するつもりである。根のメリステム形成の調節において、他の植物ホルモン、とりわけエチレンとサイトカイニンの果たす役割と、それらホルモンの応答が局所的オーキシン勾配と関係あるかどうかを解明しようと最大限の努力するつもりである。そのために生理学的、遺伝的、細胞生物学的手法を組み合わせてその複雑な経路を解明しようとしている。
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