研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
23012006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 純一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (30345186)
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研究分担者 |
桧原 健一郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (10595713)
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キーワード | 植物 / 遺伝学 / 発生・分化 |
研究概要 |
本年度は茎頂メリステムの維持に関わる3つの変異体、decussate(dec)、defective apical meristem(dam)、needle 1(ndl1)について、原因遺伝子の単離と詳細な機能解析を行った。 DEC遺伝子は植物に存在する新奇なタンパクをコードする遺伝子であり、変異体ではイネ科の葉序である1/2互生から十字対生への葉序の転換が認められる。これまでの解析から、DEC遺伝子はサイトカイニンの情報伝達経路に何らかの機能を持っていることが示唆されていた。DEC遺伝子のサイトカイニン生合成への関与を調査する為に、変異体のサイトカイニンの内生量を測定したが、活性型サイトカイニンに大きな差は認められなかった。また、DECタンパクは核において機能を持っていることが推察された。DEC遺伝子は機能未知のタンパクをコードしているが、保存されたモチーフの相同性検索を改めて行なったところ、ヒトのある腫瘍抑制因子がこのモチーフを持っていることが明らかとなった。この因子は転写に関わる因子と相互作用することが報告されていることから、DECタンパクは核に局在し、何らかの因子と共に下流遺伝子の転写を制御している可能性が示唆された。 dam変異体では発芽後初期の扁平なSAM、葉の長さの短縮、細胞形態の異常など、クロマチン制御に関わるfsm変異体と極めて類似した表現型を示した。マップベースクローニング法により原因となる変異を探索したところ、SAMやRAMの維持に関わるシロイヌナズナTSK遺伝子のイネホモログに1塩基の変異が認められ、この遺伝子がdamの原因遺伝子であることが推察された。 ndl1変異体はSAMの形が扁平となり、その後の葉原基分化が停止することから、NDL1遺伝子はSAMの維持に深く関わっていると考えられる。マッピングの結果、ある転写制御因子をコードする遺伝子に点変異が認められ、この遺伝子がndl1変異体の原因遺伝子である可能性が高いと考えられた。NDL1遺伝子はシロイヌナズナにおいてもその相同遺伝子が存在するが、その表現型はイネと異なっていることから、NDL1遺伝子におけるイネ特有の機能が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象とする3つの変異体についてすべての原因遺伝子を同定し、更にそれらの詳細な機能を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
DEC遺伝子の解析については相互作用因子の同定に向けて研究を行う予定である。また、他のSAMの維持に関わる変異体についても、詳細な表現型の調査や発現解析を行ない、原因遺伝子の機能を明らかにしていきたい。また、さらに多くの変異体の同定と原因遺伝子の単離を行なうことによって、イネにおけるSAMの維持に関わる遺伝的機構について研究を進めていく予定である。
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