研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
23012007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有村 慎一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (00396938)
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キーワード | 植物メリステム / ミトコンドリアゲノム / 植物ミトコンドリア / ミトコンドリア分裂 / ミトコンドリア融合 |
研究概要 |
独自にスクリーニングした三種類のミトコンドリア形態突然変異体(ミトコンドリア凝集・偏在・不揃い)について、原因遺伝子を同定し相補性検定を行った。ミトコンドリア凝集変異体は、既知の突然変異体fmt(friendly mitochondria)と同じ原因遺伝子の変異であった。しかしながら、この突然変異体の表現型はある環境条件によって大きく変動するという新たな性質を見いだすことができ、現在その現象の解析とともにこの現象を用いたミトコンドリア形態とその植物体環境応答への解析を新たに進めている。二つ目のミトコンドリア細胞内偏在の変異体の原因遺伝子はRHD3(根毛形態形成の突然変異体Root-hair defective 3)であり、確かにこの突然変異体の根毛は異常に短く縮れていた。原因遺伝子産物RHD3はミトコンドリアには局在せず、意外にも小胞体に局在しており、この突然変異体における小胞体の網状形態とその動きが著しく変化していた。小胞体の形態と動態は原形質流動に大きな影響を持つことが報告されている。これらのことを総合して考えると、rhd3変異体における"ミトコンドリアが細胞内偏在する"という表現型は、小胞体の形態変化から引き起こされた二次的影響である可能性が考えられた。三つ目のミトコンドリア形態不揃い変異体の原因遺伝子は未知の遺伝子であり、遺伝子産物は何らかの酵素だと考えられる。そのN末端配列によりこの酵素がミトコンドリアへ局在することを実験的に確認した。この酵素のオルソログと思われる配列が、高等植物に限らず、酵母やヒトを含む哺乳類にも広く存在している。これらはいずれも機能未解明であり、我々の突然変異体を用いた機能解析によって、真核生物共通の新規機能酵素の同定につながる可能性が高い。また、この不揃い突然変異体には相補性検定から原因遺伝子の異なる変異体が明らか
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度において、三種類のミトコンドリア形態突然変異体とその原因遺伝子の同定を行い、遺伝子機能解析まで取り組めている。メリステムなど細胞分裂部位でのミトコンドリア可視化植物とその観察技術の開発も順調に進んでおり、想定以上の順調な進展をしている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞分裂時のミトコンドリアや他のオルガネラの分配の分子機構は動物や菌類でも未だそれほど明らかではなく、ミトコンドリア分配にかかわる遺伝子の同定や分子メカニズムの解析の解析は、植物以外の多くの生物種やさまざまなオルガネラの分配機構の解明へ波及効果が期待される。突然変異体の原因遺伝子の同定と遺伝子産物の機能解析は順調であり、今後既知の遺伝子群と新たに同定した遺伝子群との関連も探っていく予定である。また斜照明蛍光顕微鏡法による新たな細胞内オルガネラライブイメージングによる解析を進めており、各種突然変異体と野生型でその動態を比較することで新たな分子メカニズムに関する知見が得られるものと期待している。
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