研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
23012008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邊 雄一郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60183125)
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キーワード | RNAサイレンシング / miRNA / P-body / RNA exosome / AGOタンパク質 / 翻訳因子 / シロイヌナズナ |
研究概要 |
miRNAとともにRNA-induced silencing complex(RISC)を構成するAGO1タンパク質の局在からProcessingbody(P-body)とmiRNAの関連について解析をおこなった。P-bodyのマーカーであるDCP1,DCP2が欠失すると細胞内で直径1μmほどのP-bodyが認められなくなるが、P-bodyが無い状態では蓄積量が低下するmiRNAと蓄積量に変化の無いmiRNAとに大きく別れた。この両者の生物学的な意義について解析をすすめた。3'-5'方向のRNA分解の機構としてRNA exosome分解系に注目し、ゲノム情報からシロイヌナズナにおける因子を拾い上げた。酵母などの因子との対応がきれいにつくなかで、多くの因子が一遺伝子にコードされていた。一遺伝子にコードされ、しかも植物の発生過程に重要であることは、T-DNA挿入株がいずれも胚性致死であることからも示された。人工miRNAを介した組織特異的な遺伝子発現抑制の系をもちいて、3種のexosome分解系に関与する因子を葉肉細胞特異的に抑制するラインを確立した。その結果、外見上は正常な個体が得られた。この個体を用いて、特定のmRNAの寿命を解析することの可能な系が確立した。RNAサイレンシングに関与するAGO1と相互作用する候補因子として葉緑体の翻訳伸長因子EF-Tuがあがっていた。この因子のT-DNA挿入株を解析したところ、ノックアウト株は胚性致死となり、ホモ接合の種子は得られなかった。プロモーター領域に挿入があり、発現のおちたノックダウン株ではいくつかの形態異常がみとめられた。地上部では葉の形態の非対称性、地下部では根の長さが短くなることが認められた。色素体におけるタンパク質合成が胚発生の非常に初期の段階から発生過程に寄与することが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メリステムに直接関係するRNAサイレンシングの機構を解析しているが、予想に反してプロモーター解析が、導入した遺伝子がすぐにサイレンシングをうけて、発現しないなど、予想外の部分をかかえている。それと平行して、メリステム維持、分化にかかわる遺伝子の解析を平行して行う。
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今後の研究の推進方策 |
従来の解析方法では発現解析などが難航しているが、miRNA経路に関与する因子について、詳細なメリステム近傍での発現、細胞内での局在と相互作用の解析をすすめる。 P-bodyのマーカーであるDCP1,DCP2はmRNAの5'-3'方向のRNA分解経路を開始する因子でもある。この因子が存在しない環境での標的mRNAの運命を解析し、メリステム維持、分化との関連を明らかとする。 短いRNAの細胞間移行に関して細胞学的な解析を展開する。関連して短いRNAを運ぶ可能性が示唆されるタンパク質についてもin vitro発現系を用いて発現させたものをもちいて解析を行う。
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