我々はこれまで、可視化細胞と画像解析により、細胞分裂、分化形態形成について解析を行ってきた。本年度は、1)表層微小管の再構築過程について、顕微鏡画像から定量的に解析するとともにシミュレーションによる検討を行った。その結果、M/G1の表層微小管の再構築過程について、微小管プラス端の動画像解析による伸長角度の定量評価とシミュレーションにより、表層微小管の配向変化のうちPhase IIIbまでは表層微小管の「初期配置」によって規定されていることが示唆された。また、Phase IIIb~IIIcの配向変化は、「細胞端部でのカタストロフ」および「分枝によらない微小管新生」によって説明できることが明らかになった。2)多くの双子葉植物の葉表皮細胞はジグゾーパズルのピースのように複雑な形状をとるが、その形態形成過程における微小管の動態と役割について、微小管を線分抽出して配向評価するとともに阻害剤を用いて検討し、葉の表皮細胞の形態形成と微小管の重合・脱重合との関連を見出した。3)分裂中期の植物細胞において表層アクチン繊維は細胞中央部の両側に一対の密な帯状パターン(actin microfilament twin peaks:MFTP)を形成するなど特徴的な配向が知られているが、アクチン繊維(およびアクチン繊維と微小管)、を可視化したタバコBY-2の形質転換細胞にアクチン束化誘導剤であるTIBAおよびJasplakinolide(Jasp)を処理すると、これらの表層および紡錘体周囲のアクチン繊維パターンが変化し、紡錘体および細胞板が著しく傾斜することなどから、細胞分裂期のアクチン繊維パターンが紡錘体の向きを制御することが示された。
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