公募研究
植物の栄養成長から生殖成長への相転換(花成)は、葉において産生された長距離性情報分子(フロリゲン)が茎頂メリステムへと輸送されることで調節されている。しかし、フロリゲンが長距離性情報分子としてふるまう上での重要なプロセスである葉から茎頂メリステムへの輸送経路に関する知見は十分とはいえず、現時点においても新規な知見が求められる状況にある。そこで、フロリゲンが葉から茎頂メリステムへと輸送される過程について、Myb様の転写因子をコードしているFE遺伝子に注目をすることで、その一端を明らかにすることを目指す。これまでの知見から、FE機能はフロリゲン機能と密接に連関していることが明らかにされている。本研究課題では、フロリゲンの輸送プロセスの中でも特に、篩部伴細胞から篩管への輸送経路に注目し、声変異の効果を遺伝学的手法、バイオイメージング的手法を用いて解析することで、フロリゲン輸送の分子機構の一端に迫ることを目指す。過去の知見にしたがえば、フロリゲンは葉の篩部伴細胞においてつくられた後に、原形質連絡を介して節管に運ばれると考えられる。そこで、今年度はFT-EGFPタンパク質の細胞内動態を詳細に観察することを目的として、シロイヌナズナの原形質連絡局在マーカーラインの整備を進めた。35S::PDLP8-YFPはそのうちの一つであり、PDLP8-YFP融合タンパク質の解析を通じて、PDLP8の原形質連絡への局在を確認することが出来た。また、FE制御標的タンパク質の細胞内局在性検討にむけての準備も開始した。
2: おおむね順調に進展している
原形質連絡局在マーカーラインの作出に若干の時間を要したが、形質転換シロイヌナズナのマーカー系統のライン化も滞りなく進んでいる。下流候補のノックアウトラインの選抜も含め、今年度は研究材料の整備に時間を要することになったが、次年度以降の解析にむけての準備は順調に進展した。
今後は、注目している事象がFTタンパク質の「積み込み」もしくは「積み降ろし」過程のどちらに関わっているのかを検討する必要がある。胚軸を介した接ぎ木法を利用することで、こうした疑問に対する解答が得られるのではないだろうかと考えている。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
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