イネゲノムにはta-siRNAの標的になるETT/ARF転写制御因子は4コピー存在し、それぞれOsETT1~OsETT4と呼ばれている。これら4つのETT/ARF転写因子の発現は程度の差こそあれshl/sho変異体で亢進しており、このことがシュートを欠失する一因と考えられる。これまでの研究では、4つのOsETT遺伝子のある程度の機能分担が予想され、その中でもOsETT3の適切な発現が再分化過程に於けるシュート構築に必須であると考えられる結果が得られている。そこで、本年度はOsETT3を中心にOsETT遺伝子の機能解析を集中して行った。大腸菌に発現させた4つのOsETTタンパク質は、予想とは異なり、すべて類似配列が濃縮されてきた。ただし、類似配列の濃縮パターンはOsETT1とOsETT3は良く似ており、OsETT2とOsETT4は少し異なっていた。この結果は現在行っているゲルシフト法による結合の検証でもほぼ符合する結果が得られている。以上のOsETTタンパク質の結合標的配列の解析からは、OsETT1とOsETT3は類似した標的を制御しており、OsETT2とOsETT4はこれらとは多少異なる下流の情報伝達が存在する事が示唆された。なお、ETTIN遺伝子がコードする転写因子はARF(auxin response factor)転写因子の一つのグループであり、オーキシン誘導プロモーターが持つオーキシン応答配列に他のオーキシン応答性のARFと競合して結合する事によりオーキシン応答を抑制する働きが予想されていた。しかしながら、本実験で明らかになったSELEXによるOsETTの結合濃縮配列は、オーキシン応答配列と一部重なる物の、オーキシン応答配列とは明らかに異なっていた。
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