公募研究
花器官、すなわちがく片、花弁、雄しべ、心皮の4種類の器官は、いずれも葉が特殊な形態と機能を持つように変化したものである。花芽メリステムによって作られたこれらの器官の原基は、ある程度の大きさになるまで細胞分裂によって成長し、つぼみを形成する。やがて花器官は外的、内的なシグナルを受けて急速に大きくなる。これが開花で、器官の拡大は主に細胞伸長によって行われる。では、この外的、内的なシグナルを統合し、一つの花の中の花器官を同調的に伸長成長させるしくみはどのようになっているのだろうか? これまでの研究から、少なくともアブラナ科植物ではジャスモン酸(JA)が開花を誘導する「『開花』ホルモン」として働いていることが明らかになった。JAは雄しべの花糸で生合成され、他の花器官にも作用することで、花器官の同調的な伸長成長を実現しているらしい。本年度は、成熟しつつあるつぼみの花糸でJA生合成が活性化されるしくみを明らかにすることを目的に、シロイヌナズナでJA生合成の最初の段階を触媒するリパーゼの遺伝子DAD1のプロモーター解析を行った。その結果、花糸特異的な発現に必要な4つの領域を同定することができた。これらの領域には花糸での発現を正に制御するエンハンサー配列だけでなく、花糸以外の器官での発現を抑制する配列も含まれているようである。次に、この推定エンハンサー配列に結合する候補転写因子に転写抑制ドメインを付加してシロイヌナズナに遺伝子導入し、dad1の表現型コピーが現れないか検証した。一部の花で開花異常が観察されたが、明瞭な結果ではなく、これらの因子の寄与についてはさらに検討が必要である。器官間コミュニケーションに関する研究としては、シロイヌナズナの気孔形成抑制ペプチドEPFL5についても解析し、EPFL5がERECTAファミリー受容体を介して特にMUTE遺伝子の発現を抑制し、メリステモイドの機能を低下させて気孔形成を抑制することを示した。
(抄録なし)
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http://tabacum.agr.nagoya-u.ac.jp/index.html