研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
23012017
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 正樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10242851)
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キーワード | 細胞周期 / 細胞分裂 / 転写制御 / シロイヌナズナ / 植物 / Myb転写因子 / ユビキチンリガーゼ / サイクリン |
研究概要 |
シロイヌナズナのR1R2R3-Mybには転写活性化因子として働くMyb(Activator Myb)と、転写抑制因子として働くMyb(Repressor-Myb)がある。これらのMybはMSAエレメントと呼ばれる共通のシスエレメントを通じてG2/M期特異的遺伝子の発現を制御している。今年度は主にActivator Mybの研究から以下のことを明らかにした。(1)シロイヌナズナにおいてG2/M期に特異的な遺伝子群にはMSAエレメントの塩基配列がエンリッチされていることがわかり、これらの配列を用いて新たにMSAコンセンサス配列を決定した。(2)シロイヌナズナのActivator Myb変異体を用いてマイクロアレイ解析を行ったところ、多くのG2/M期特異的遺伝子の発現が低下していることがわかった。(3)Activator Myb変異体では、以前に報告しているサイトキネシスの異常以外にも多面的な表現型を示していることがわかった。 有糸分裂の異常により体細胞の染色体数が倍加する変異体(gig1)に関する研究を進めた。今年度は以下に示す研究により、原因遺伝子GlG1がAPC/Cユビキチンリガーゼの負の制御因子をコードしていることを示した。(1)gig1変異体の表現型はAPC/Cのコアサブユニットの発現を低下させることにより抑圧された。(2)gig1変異体の異常は、APC/Cの標的タンパク質であるCYCB2;2の遺伝子破壊により促進された。(3)GIG1やUVI4を過剰発現させると、標的タンパク質であるCYCB1;2が過剰に蓄積した。(4)GIG1と、そのパラログであるUVI4は、酵母ツーハイブリッドにおいてAPC/C活性化因子(CDC20とFZR)と結合した。つまりGIG1とUVI4は、APC活性化因子に結合することで、APC/Cの活性化を抑制していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
gig1変異体の原因遺伝子の機能を解明した。転写活性化因子としてはたらくR1R2R3-Mybに関して、多くの標的遺伝子を共通に制御し、多様な生理的な役割があることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
転写抑制因子として働くRIR2R3-Mybの機能解析を進めるほか、APC/C阻害タンパク質GIG1およびUVI4に関して以下の様な研究を行う。 (1)GIG1とUVI4の二重変異体は致死であり、部分的な機能重複があると考えられるが、それぞれの単独変異体は異なった異常を示すことがわかっている。そこで、GIG1とUVI4の機能や作用メカニズムの違いを明らかにする。(2)GIG1の発現を誘導したときに量が増加するタンパク質をプロテオーム解析により同定し、APC/C標的タンパク質の網羅的同定を行う。
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