今後の研究の推進方策 |
サイトカイニンシグナルはその受容体であるヒスチジンキナーゼAHKからレスポンスレギュレーターとして機能するB型ARRへと二成分制御系を介して伝達されることが知られている。シロイヌナズナにおいてB型ARRは11種同定されているが、ARR1,ARR10,ARR12を同時に欠損させるだけでサイトカイニン非感受性となりメリステムの分裂活性が著しく低下することが報告されている。逆に、ARR1,ARR10,ARR12のうちいずれか一つの機能が正常であれば、野生株と同様の表現型にまで回復する。このことは、ARR1,ARR10,ARR12は機能が重複しており、これらのいずれかをarr1/10/12三重変異体で発現させるとメリステムの分裂活性を正常にもどすことができると考えられる。メリステム内での発現させる部位や期間を限定することで、サイトカイニン情報伝達のメリステムにおける空間的役割やメリステム活性の可塑性に関して知見を得ることができると期待される。幹細胞ニッチにおけるサイトカイニン情報伝達の重要性を前提に考えれば、B型ARRの中でもARR1,ARR10,ARR12 mRNAは特に幹細胞ニッチ領域で強い発現が観察される可能性も期待される。これらの解析から、幹細胞ニッチに特異的なサイトカイニン情報伝達がSAMの活性維持にどの程度重要なのか、SAM内のサイトカイニン高感受性領域はどのような仕組みによって決定づけられているのかを明らかにする。
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