研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
23012019
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
服部 束穂 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (10164865)
|
キーワード | シロイヌナズナ / エピジェネティック制御 / サイトキネシス / ヘテロクロニック変異体 / 胚発生 / 発芽 / 種子 / GFP |
研究概要 |
本研究は、胚発生過程において発芽後成長を特徴づけるプログラムの抑制メカニズムを明らかにすることを目的とする。これまでに発芽後成長プログラム異時発現マーカーとしてPYK10-EGFPを用い、本レポーターがが胚において異時発現する新奇変異体heterochronic expression of pyk10(hep;仮称)を多数分離した。hep変異体は、胚の発達が初期で停止するものと形態形成が進み発芽可能な種子を形成しうるものに大別される。本年度は、それぞれについて代表的な系統、6A21と10A4/13B19について解析を進めた。6A21はパターン形成が正常に起こらず、胚は主に球状の細胞塊となり発達を停止する。6A21におけるPYK10-EGFP)の発現は、同時期の正常種子が成熟した段階以降に起こった。表現型およびマップポジションから、PRP8 Splicing Factorをコードするsus2アレルであることを疑い、sus2-5とのアレリズムテストによりこれを確認した。 10A4 および 13B19 の胚は成長が分離する同じ莢内の正常種子に比べて遅く、子葉の発達が悪いが、乾燥前に種子をレスキューすることにより、初期芽生えを得ることが出来る。子葉にトリコームを生じ、正常種子が屈曲胚期(変異体は魚雷胚型)の7DAF付近でPYK10-EGFPの発現が始まった。形態的特徴から tanmei(tan;EMB2757)アレルであることを疑い、シーケンスによりこれを確定した。13B19変異はTANタンパク質のN末端領域で終始コドンをもたらすことからnull変異と考えられた。これまでに記述のあるtan変異表現型とPYK10の異時発現に加え、サイトキネシスに重大な異常があることを新たに見いだした。胚では細胞の異常形態や細胞列が乱れ、芽生え根ではメリステム付近での細胞肥大・形態異常が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、2つのhep変異体についてその原因遺伝子を特定することができた。さらに、tanmei(tan)サイトキネシス異常という新しい表現型を見つけることができ、この変異体の原因遺伝子の機能解明に関する重要な手がかりを得ることが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
TANはWD40リピートタンパクで、その中にDDB1-CUL4と結合してubiquitin ligaseのsubstrate receptorとして働くタンパク質に共通するWDxRモチーフをもつことから、TANにもそのような機能が推定される。TANの標的を明らかにすることで、TANの遺伝子発現抑制やサイトキネシス制御における役割を明らかにしていきたい。胚発生相での発芽後プログラム作動抑制にエピジェネティック制御が関与していることを想定しており、PYK10をはじめとするlec変異体での異時発現遺伝子について、ヒストン修飾を中心としたエピジェネティックマークの状態をさらに詳細に解析することによっても、胚発生相における発芽後成長相プログラム発動抑制機構に迫りたい。
|