研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
23012029
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
出村 拓 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (40272009)
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キーワード | 維管束 / 道管 / VND転写因子 / 二次細胞壁 / 転写カスケード / 一分子蛍光分析装置 / 抑制変異体 / 次世代シーケンサー |
研究概要 |
維管束系の全ての細胞はシュート頂と根端のメリステムから連続する幹細胞である維管束前形成層・形成層(すなわち維管束メリステム)に由来するが、維管束メリステム中の隣り合った未分化な細胞がそれぞれ異なる機能を持った維管束細胞へと分化していくメカニズムについてはほとんど分っていない。本研究では、道管の分化を制御するマスター因子として機能するVND7を中心として、VNDファミリーの発現と機能の制御機構を詳細に解析することで、維管束メリステムからの細胞運命の決定機構を明らかにすることを目的とした。今年度は、VND遺伝子群のプロモーター解析を計画したが、これに向けた研究として、一分子蛍光分析装置を用いたシス因子の同定法の確立に成功した。そして、これを用いて、VND7タンパク質とπXCP1遺伝子のプロモーター領域のタンパク質-DNA結合の検出を行った。また、VND転写因子群の機能制御メカニズムを以下の二つの手法を用いて解析した。(1)VND遺伝子群の道管分化制御の冗長性・協調性を明らかにするために、昨年度に引き続きT-DNA挿入とRNAiを利用した多重変異体の作成と解析を進めた。また、VND7により発現が制御される遺伝子をレポーターとして、VNDファミリー間における転写活性能を比較した。(2)正遺伝学的手法によるVND7の機能制御に関わる新規因子の探索を行った。今年度は、得られたVND7機能抑制変異体のキャラクタライズ(相補性検定、形態観察)を進めるとともに、マッピングならびに次世代シーケンサー利用による責任遺伝子のクローニングを行ったが、現時点では責任遺伝子の確定には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つの主要な研究項目のうちで、「VND7機能抑制変異体の原因遺伝子のクローニング」についてはやや遅れている。これは、ターゲットとした変異体の表現型が当初の予想よりも難解であることが原因である。しかしながら、すでに表現型解析の手法に改変を加えており、クローニングの見通しが立ったことから、全体としてはおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って研究を推進することで、研究計画をほぼ遂行できると考えている。ただし、突然変異体の原因遺伝子のクローニングについては、複数の遺伝子がかかわっていることも予想されるため、予定でお折に進まない可能性もある。この場合、研究計画としては、表現型の詳細解析を中心とすることも検討する。
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