維管束系の全ての細胞はシュート頂と根端のメリステムから連続する幹細胞である維管束前形成層・形成層(すなわち維管束メリステム)に由来するが、維管束メリステム中の隣り合った未分化な細胞がそれぞれ異なる機能を持った維管束細胞へと分化していくメカニズムについてはほとんど分っていない。本研究では、道管の分化を制御するマスター因子として機能するVND7を中心として、VNDファミリーの発現と機能の制御機構を詳細に解析することで、維管束メリステムからの細胞運命の決定機構を明らかにすることを目的とした。今年度は、VND遺伝子群の発現制御機構の解析とVND転写因子群の機能制御メカニズムの解析を行った。VND遺伝子群の発現制御機構の解析では、VND遺伝子群の維管束細胞特異的遺伝子発現に寄与するシス因子・トランス因子の同定を進め、VND7遺伝子の発現を正に制御するトランス因子としてGATA遺伝子を見出し、その過剰発現体や機能欠損体の作出を進めた。また、一分子蛍光装置を用いた転写因子-シス因子結合解析系を確立した。一方、VND転写因子群の機能制御メカニズムの解析として、VND遺伝子群の道管分化制御の冗長性・協調性を明らかにするために、平成23年度に引き続きT-DNA挿入とRNAiを利用し手作出した多重変異体の形態観察を進めた。また、平成23年度に引き続き、正遺伝学的手法によるVND7の機能制御に関わる新規因子の探索を行った。VND7転写因子の過剰発現によってシロイヌナズナ植物体全体に道管への分化転換を誘導できるシステムを利用してこれまでに得られている多数の変異体(すなわち、VND7機能抑制変異体)のキャラクタライズ(相補性検定、形態観察)を進め、マッピングならびに次世代シーケンサー利用による責任遺伝子のクローニングを進めた。
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