研究概要 |
研究の目的 器官分化のほぼ全てが胚発生段階で完了する動物と異なり、植物は分裂組織により、死ぬまで新しい器官を作り続ける。このことから、この分裂組織は植物の形態形成において根本を担う重要な組織であり、その性質やサイズは厳密に、また遺伝的に制御されなければならないと考えられる。そのためには、分裂組織を中心とした空間認識機構・細胞間情報伝達機構は高度に発達していると考えられるが、現在、その分子基盤が整っているとは言い難い状況にある。 本研究では、茎頂分裂組織・根端分裂組織におけるサイズの維持機構を中心に解析することで、植物における細胞間シグナル伝達系の分子機構の解明につなげたいと考えている。その中でも、CLV3ペプチドの合成・修飾・移動・受容・受容後のシグナルとCLV3ペプチドの機能様式を総合的に解析する。 今年度の成果 1: clv2エンハンサー突然変異体について、次世代シーケンサーを用いた原因遺伝子の単離を行った。その結果、#12-2,#16-1,#16-3について、BAM1遺伝子エキソン内にアミノ酸置換を伴う変異を見いだした。また、タグライン(単独突然変異体)もペプチド耐性を示した。さらに、bam1 rpk2二重突然変異体はbam1やrpk2単独突然変異体よりも、強いペプチド耐性を示したことから、BAM1,CLV2,RPK2は独立に根端分裂組織の維持に関わることが示唆された。また、根端領域においてCLV1は機能していないことが示唆されることから、地上部と地下部で、CLV1,BAM1がそれぞれ使い分けられていることが明らかとなった。 2:CLV3ペプチド耐性突然変異体の原因遺伝子として、PUB4を単離した。PUB4はユビキチンリガーゼをコードすることから、CLVシグナル伝達系にはタンパク質分解系が関わることが示唆された。
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