研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
23012036
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
関 原明 独立行政法人理化学研究所, 植物ゲノム発現研究チーム, チームリーダー (80281624)
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キーワード | 乾燥ストレス / 再吸水による回復過程 / シロイヌナズナ / ヒストン修飾 / クロマチン制御 / クロマチン免疫沈降 / エピジェネティックな制御 |
研究概要 |
植物が環境ストレスを記憶する機構には、エピジェネティックな制御機構が関与すると考えられるが、植物が一度受けた環境ストレスをピストン修飾などのクロマチン制御を介して記憶する機構が存在するかどうかは不明である。本研究では、「一世代内で繰り返される環境ストレス刺激に対して、植物体がいかにクロマチンレベルで応答するのか」という事を主目的として解析を進めている。植物のストレス記憶に関与するエピゲノム制御の可能性を検討するため、プレート上で生育したシロイヌナズナ(15日齢)を用いて、乾燥ストレス処理(4時間)後、再吸水処理(5時間目まで)に伴う経時的なクロマチン動態変化を、特にヒストン修飾を中心に解析を行った。クロマチン動態変化の解析はクロマチン免疫沈降定量-PCR法を用いた。その結果、乾燥ストレス誘導性遺伝子であるRD20、RD29A、AtGOLS2において、再吸水処理により、RNA pol IIは速やかに標的遺伝子上から脱落し、これら遺伝子が不活性化する事が明らかとなった。またこの時、転写活性化のマーカーであるヒストンH3Lys9アセチル化も、遺伝子の発現活性停止の動きに呼応して、再吸水処理により速やかに減少することがわかった。一方、もう一つの転写活性化マーカーであるヒストンH3Lys4トリメチル化は、経過時間に伴って緩やかに減少することがわかった。これらに対して、転写抑制のマーカーであるヒストンH3Lys27のトリメチル化は、遺伝子領域にそれぞれ依存した特異的な変動を示す事が明らかとなった。また、遺伝子抑制に伴い、これら遺伝子領域上でヌクレオソーム密度の経時的な振動の現象が見られた事から、クロマチンの構造変換とヒストン修飾の変化が連動している可能性が示唆されるとともに、ピストンH3Lys9アセチル化を標的とする脱アセチル化酵素がこれら遺伝子の抑制に必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロイヌナズナの乾燥ストレスから再吸水による回復過程で、乾燥ストレス誘導性遺伝子領域においてダイナミックなヒストン修飾変化が起こっている事を明らかにした。これら結果を論文としてまとめ現在論文投稿し、改訂版を作製中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、短日条件下、ポット上で育てた植物体を用いて、乾燥ストレス処理の繰り返しによりさらに強度なストレスを与えた場合での、エピゲノム因子のストレス記憶への関与を検討、解析中である。
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