研究領域 | 生殖系列の世代サイクルとエピゲノムネットワーク |
研究課題/領域番号 |
23013006
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村野 健作 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (80535295)
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研究分担者 |
加藤 広介 筑波大学, 医学医療系, 助教 (90466673)
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キーワード | ヒストンシャペロン / クロマチン / 初期胚細胞核 |
研究概要 |
マウス胚発生におけるTAF-Iの機能を解析するため、TAF-Iノックアウト(KO)マウスを作製した。TAF-I KOマウスは、野生型に比べ胎生8.25日目から徐々に成長が遅れ、重度な貧血と未熟な血管形成を示し、胎生12.5日目までに致死であった。TAF-I KOマウスで観察された成長の遅延を詳細に解析するため、TAF-I KO ES細胞を構築した。TAF-I KO ES細胞は野生型ES細胞と同等の細胞増殖速度を示した。しかし、embryoid bodyを形成させ細胞分化を誘導すると、TAF-I KO細胞では顕著に細胞増殖速度が低下した。TAF-I KO ES細胞にTAF-Iを一過的に過剰発現させると、分化にともなう細胞増殖速度の低下は回復した。一方、ヒストンシャペロン活性を欠失したTAF-I変異体では回復は観察されなかった。以上の結果から、TAF-Iはヒストンシャペロンとして発生分化過程の細胞増殖速度を維持し、血液・血管を含む正常な組織の形態および機能の形成に関与すると考えられる。 一方、受精直後の初期胚発生におけるTAF-Iの機能を解析するために試験管内受精によりTAF-I KO受精卵を得た。ところがTAF-I KO受精卵では母性由来のTAF-Iが含まれており4細胞期まで消失しないことが明らかとなった。そこで、マウス受精卵においてTAF-Iの機能阻害あるいは発現抑制をする実験系の立ち上げを試みた。現在までに、GV期卵の採卵および、受精卵へのmRNAのインジェクションに成功した。また、TAF-Iの機能阻害を目的とした抗体の作製に成功した。今後、これらの機能阻害および受精卵での外来遺伝子発現系を用いて、受精にともなうプロタミン-ヒストンの交換過程においてTAF-Iの果たす役割を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
未受精卵へのmRNA、siRNA、タンパク質、抗体のインジェクション系の立ち上げに試行錯誤しているため。
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今後の研究の推進方策 |
未受精卵を用いた実験系の立ち上げやコンディショナルノックアウトマウスの作製には時間がかかるため、同時に試験管内において、精子核クロマチンとヒストンの交換機構の解析を進める。また初期胚細胞核のクロマチン構造を経時的に免疫染色を用いて観察する。
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