公募研究
DNAの脱メチル化の機序として、DNA複製を伴う受動的脱メチル化と、DNA複製を伴わない能動的脱メチル化が知られている。植物では、DNAグリコシラーゼが能動的脱メチル化の中心的な役割を果たし、塩基除去修復と協調して脱メチル化が生じることが知られているが、哺乳類では能動的脱メチル化を担う分子機構は不明のまま残されている。能動的DNA脱メチル化に関する研究は、DNAの複製が起こらないプラスミドDNAを基質とした研究を中心になされてきた。しかし、生体内の基質であるゲノムは、ヒストンに巻きついたクロマチン構造をとっており、実際、PGC7による能動的DNA脱メチル化の阻害には、ヒストンのメチル化修飾が、その認識に重要であることがわかってきた。しがたって、能動的DNA脱メチル化を検出する基質として、より生体内に近い状態のクロマチンを用いることが必要であると考えられる。一方、ES細胞の未分化性の維持に必須な遺伝子であるNanogのプロモーター領域は、成熟精子では高度にゲノムがメチル化されているが、受精後に能動的に脱メチル化されることが報告されている。そこで、本研究では、能動的DNA脱メチル化を検出できる人工基質を得るために、Nanogプロモーター(-325~+48)制御下にEGFPまたはLuciferaseを繋いだ遺伝子を導入したES細胞を作成した。これらのES細胞において、未分化な状態では外因性のNanogプロモーター領域のCpGにメチル化は全く認められず、分化誘導10日後にメチル化が認められることが明らかとなった。今後、これらのES細胞からクロマチンを精製し、ES細胞およびインプリント遺伝子の脱メチル化活性を有することが報告されているEG細胞の抽出液と混合することにより、能動的DNA脱メチル化を誘導する予定である。
2: おおむね順調に進展している
23年度の交付申請書の研究計画に記載した実験のほぼ全てを行うことができたため、本研究は、「おおむね順調に進展している」と考えられる。
最近、我々を含む複数のグループにより、Tet3による5-メチルシトシンから5-ヒドロキシメチルシトシンへの変換が能動的DNA脱メチル化に関与することが明らかにされた。しかし、能動的DNA脱メチル化には、5-ヒドロキシメチルシトシンを介さない経路が存在することが示唆されている。そこで、本研究では、Tet3依存の能動的DNA脱メチル化経路に加えて、Tet3に依存しない能動的DNA脱メチル化経路について、DNA修復経路やDNA脱アミノ化酵素を中心に検討していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
Bio Reprod
巻: 86 ページ: 1-8
10.1095/biolreprod.111.095018
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 108 ページ: 20621-6
doi:10.1073/pnas.1112664108
http://www.nagahama-i-bio.ac.jp/guide/kyoin/detail/post-6.html