研究領域 | 生殖系列の世代サイクルとエピゲノムネットワーク |
研究課題/領域番号 |
23013017
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中西 友子 鳥取大学, 医学部, 助教 (10344863)
|
キーワード | インプリント遺伝子 / 雌雄前核 / マイクロインジェクション / 受精卵 / DMR / Bisulfite sequencing / DNAメチル化 |
研究概要 |
哺乳動物では、同じゲノムであってもその働きが雌雄で異なることが知られている(ゲノムインプリンティング)。この違いは、主に生殖細胞形成過程でDNAメチル化を含むエピジェネティックな修飾が付加されることで確立され、受精後にゲノムがグローバルに脱メチル化される間も維持される。我々はこれまでに、外来性人工遺伝子をメチル化して受精卵の雌雄前核に注入することで、任意のDNA配列の脱メチル化に対する感受性を、雌雄前核のもつ特異的な脱メチル化能を利用して解析できる系を確立している。 今年度は、H19インプリント領域に着目し、そのメチル化修飾がどのような機構で受精後雌雄ゲノムで起こるグローバルな脱メチル化の波を免れるのかについて解析した。まず、H19 Differentially methylated region (DMR)を用いてメチル化解析プラスミドを作製した。次にこのプラスミドをメチル化したりしなかったりした後、雄性前核に注入し、そのメチル化状態についてBisulfite sequencingにより解析した(マイクロインジェクションおよびBisulfite sequencing解析に必須なマニピュレーターとPCR Thermal cyclerを備品として購入した)。その結果、メチル化状態のものを用いた場合は、雄性前核に存在する脱メチル化活性を逃れメチル化が維持されていた。また非メチル化状態のものを注入した際にはメチル基が付加されていた。インプリント領域以外の外来性人工遺伝子をメチル化した後雄性前核に注入した際には脱メチル化されるという結果を得ていることから、雄性前核内では、インプリント領域のDNA配列を認識することで、そのメチル化を維持するか否かといった調節がなされていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H19 DMRの雄性前核への注入と解析を通して、インプリント領域のメチル化維持機構の発端が見えた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、H19 DMRの雌性前核への注入や他のインプリント領域の解析を通し、インプリント領域のメチル化修飾が、受精後雌雄ゲノムで起こるグローバルな脱メチル化の波をどのような機構で免れて維持されるのか明らかにする。
|