ゲノムインプリンティングは、生殖細胞形成過程で雌雄ゲノム特異的なエピジェネティック修飾が付加されることで確立される。雌雄ゲノムの違いは、受精後にゲノムがグローバルにリプログラミングされる間も維持されるが、そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。 24年度は、引き続きH19ICRインプリント領域をメチル化・非メチル化状態で雌性前核に注入することで、受精後のメチル化制御機構について解析を行った。雄性前核の時と同様に、メチル化状態のものを用いて作製したマウスではメチル化が維持され、非メチル化状態のものを注入した際にはメチル基が付加されていた。ただ、非メチル化H19ICRの結果を雌雄で比較すると雄性注入では雌性注入よりメチル化が高い傾向にあった。この傾向はメチル化ICRを用いることで減少し、またCTCFが結合できない変異ICRを用いた場合にも減少した。これらのことから、雌雄ゲノムにおける受精後のメチル化調節にはCTCF結合配列が重要な役割を果たすことが明らかとなった。 また上記システムでは、インプリント遺伝子のリアルタイムなメチル化追跡系の構築が困難だったため、同じくインプリント遺伝子として知られるXistの発現を可視化できるマウスの作製と解析を新たに立案し25年度に計画を延長した。すでに可視化可能なマウスが作製できており、受精後に始まるXistの発現制御機構の解析を進めることで、受精後におけるインプリント遺伝子のメチル化制御機構の解明につながると期待できる。
|