公募研究
わたしたちは、異数性による流産を繰り返していると思われる習慣流産の3名の患者で、第1減数分裂時の相同染色体の対合に関与するシナプトネマ複合体の蛋白をコードするSYCP3遺伝子の変異を同定した。これらの変異はすべてスプライシング部位の変異で、第8イントロンの残存、もしくは、第8エクソンのスキップをきたし、C末端の変異型SYCP蛋白を産生する。これまでの研究で、これらのC末端の変異蛋白が優性阻害効果によって、正常のSYCP3蛋白のファイバー形成を阻害することを、細胞株を用いた実験で証明している。しかし、実際の減数分裂時の卵細胞における変異型SYCP3蛋白の挙動、染色体分配に対する影響に関しては未解明である。そこで、本研究では、これら変異型SYCP3蛋白をマウスの卵細胞に強制発現させ、減数分裂細胞レベルでの異常の検出を試み、習慣流産の発症メカニズムに迫ることを目的としている。昨年度に確立した、マウス卵巣の器官培養の実験系を用いて、習慣流産の患者でみられた変異遺伝子を強制発現させ、変異型SYCP3蛋白の作用を解析した。正常SYCP3蛋白は染色体の軸上に同定され、内因性のSYCP3蛋白とともにシナプトネマ複合体を形成したが、変異型SYCP3蛋白を発現した卵細胞はシナプトネマ複合体が太く、形態異常を呈したが対合した。ただ、同じ時期の卵細胞で対合染色体を数えると正常よりやや少なかった。対合した染色体ではMLH1 fociは正常であった。以上より、変異があると変異型蛋白の優性阻害効果により対合が遅れることがその後のキアズマ形成に影響し不分離を起こす染色体の頻度が増加すると推測された。
2: おおむね順調に進展している
1年目は実験系の確立に、2年目は実際の変異蛋白の挙動の観察にあてる計画を立てていたが、予定通り、2年間で卵巣の器官培養による実験系の確立、患者の遺伝子変異による変異型蛋白の作用が観察できた。
異数性を繰り返す習慣流産患者での本遺伝子の変異は頻度が高くないことがわかった。順次、他の減数分裂特異的遺伝子の変異スクリーニングや、エクソーム解析をおこない、新たな習慣流産の原因遺伝子を同定し、習慣流産の発生メカニズムに迫る予定である。
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