研究領域 | ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究 |
研究課題/領域番号 |
23101503
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 伸幸 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (80333582)
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キーワード | 学習 / 知能 |
研究概要 |
ホモ・サピエンスがネアンデルタールと交替した原因として、サピエンスに特異的に備わった学習能力が想定されている。サピエンスは模倣による社会学習能力と試行錯誤による個体学習能力を兼ね備えていたため、社会学習能力のみで個体学習能力の低かったネアンデルタールより優位に立ったのだ、というわけである。しかし、この議論には大きな問題点がある。それは、進化の歴史を考えると、個体学習よりもむしろ社会学習の方が「高度な」能力であること、そして個体学習ではサピエンスが生息地域を急速に拡大していったことを説明できないことである。そこで本研究は、サピエンスに特有の能力として、第三の能力、即ち新奇な環境において素早く適応的な行動を見出す能動的な個体学習能力である「創造性」が存在すると仮定する。しかし、このような能力を測定する方法はいまだ確立されていない。本研究の目的は、心理学実験により、この能力の測定方法を確立することにある。 23年度は、2種類の個体学習能力(創造性と試行錯誤能力)と社会学習能力(模倣能力)との間の関係を明らかにするために、実験室実験を行った。創造性を測定する課題としては「ひも課題」と「ロウソク課題」、試行錯誤能力を測定する課題としては「ロンボス課題」、模倣能力を測定する課題としては「知恵の輪課題」を用いた。実験結果は、創造性は試行錯誤能力とは負の関係、模倣能力とは正の関係にあるが、模倣能力と試行錯誤能力は独立であることを示唆した。従って、これまで同じ個体学習として区別されてこなかった創造性と試行錯誤能力との間には実は負の関係がある可能性がある。また、模倣能力との間に負の関係のある能力は見られなかったことから、社会学習能力と個体学習能力はトレードオフ関係にはないのではないか、という可能性も浮上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の種類の学習能力を一つの実験の中で測定する初めての試みであるにもかかわらず、それぞれの能力を測定するために選択した課題が不適切なものばかりではなく、課題間の相関を測定することに成功したため
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今後の研究の推進方策 |
23年度には、各学習能力の測定のためにそれぞれ1~2種類の課題しか用いることができなかったため、他の測定方法を検討する必要がある。それにより、測定方法の妥当性と23年度め実験結果の信頼性を検討することができる。
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