研究実績の概要 |
本研究課題においては、現代人とネアンデルタール人の交替劇を学習能力の差と考え、現代人の学習能力を支える社会的能力の神経基盤に関して実験的研究を推進した。特に、現代人は高度な社会性を有することから、社会集団内に属する個々の相互作用によって実現される社会学習に注目した。社会学習の進展には、学習者・教示者が互いに受容することが重要であることから、受容が社会学習の動因となるという仮説の元、実験的検証を行った。実験においては、受容的態度として共感をターゲットとし、 (1)被共感が共感対象者の報酬行為になるか?、(2)共感遂行が共感行為者の報酬行為になるか?という二点の仮説を設定した。 fMRIを用いた実験的研究の結果、平成23年度は、(1)に関して自らの体験談に対して評定を受ける際に、評定者から共感的態度を示されることで腹側線条体の賦活することを見いだした。並行して、評定者との交流意向が高まることを示した。これより、被受容は、脳内では報酬として表象され、社会的行動を惹起することが示された(Kawamichi et al., submitted)。平成24年度は、(2)に関してdual fMRIによる2者の脳活動の同時計測結果をもとに行動実験を実施した。援助時に報酬系が賦活し、共感特性によりそれが増強されるという結果に対して、行動実験により、援助時にはうれしさを感じることを示した。これから共感を通じて賦活した報酬系の活動が、うれしさを表象することを示した。すなわち、共感を行うこと自体も、他者を助ける援助行動では報酬となることを示した。これは、学習の場面では教示者が学習者を援助する際にも自己の行動自体が共感を介して報酬となっている可能性を示唆する(Kawamichi et al., 2013)。こうしたことから、受容行動は、社会学習の動因として重要であることを示唆する結果を得た。
|