研究実績の概要 |
学習の強化因子として学習行動に直結する学習意欲喚起に資する内発的報酬(達成感・有能感)を提案し、機能的磁気共鳴画像法(functional Magnetic Resonance Imaging, fMRI)を用いて有能感の神経基盤を明らかにしたうえで、内発的報酬により喚起される意欲が強化学習に資する神経科学的プロセスを明らかにすることを本研究の目的とした。本年度は、昨年度の行動実験成果を活用し、有能感の神経基盤を探るためのfMRI研究を実施した。課題は、学習とも関連する作業記憶(ワーキングメモリ)課題のn-back taskを用いた。n-back taskは、ディスプレイ上にn個前に呈示された数字が、現在呈示されている数字と一致するか否かの判定を要する。実際に、健常成人を対象として5つのタスク(1~5-back task)を実施した。各n-back task遂行中のfMRI計測を行いながら、同時に各n-back taskに対する有能感と意欲の程度について4段階の主観的評価を行った。有能感と意欲の設問選択時に同期した脳活動を解析した結果、有能感に伴う脳活性部位を同定できなかったが、意欲の程度と相関し線条体の活性がみられることがわかった。よって、有能感に関わる神経基盤というよりも、むしろ、有能感により喚起される意欲の神経基盤として線条体の関連性を明らかにした。さらに、線条体の活性度に依存し、外側前頭前野や頭頂葉等のn-back task関連脳部位の活性度が高かったことから、内発的報酬により喚起される意欲が、課題関連脳部位の活性度を高め学習の強化プロセスに寄与することが示唆された。
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