近年注目されている巨大ひずみ加工をバルク状の金属材料に適用することで,結晶粒径をナノレベルに微細化することが可能になる(バルクナノメタルと呼ばれる).このようにして作製された超伝導金属は,ナノ構造を持ったバルク超伝導体と見なすことができ興味深い研究対象である.本研究では,バルクナノメタルの超伝導物性を開拓することを目的とし,金属元素超伝導体について極低温電子輸送測定と磁化測定を行った.得られた成果を以下に示す. 1.バルクナノメタル超伝導材料として典型的な金属元素超伝導体であるNbやVについて,6GPaの圧力で高圧ねじり(HPT)加工を行うことで巨大ひずみを導入した超伝導材料を作製しその超伝導特性を詳細に調べた.(研究計画班との連携) 2.本年度はHPT処理を行ったNb(以下,HPT-Nbと記す)における磁場中の渦糸状態に関する研究を中心として行い,上部臨界磁場Hc2と表面臨界磁場Hc3の振る舞いを明らかにした.HPT-Nbの磁化特性から定義したHc2(T)は結晶粒の微細化が進むN = 0 ~ 2 (N = 2で結晶粒半径r ~125 nm ~ 5ξ(0))の間で大きく増加するが,N 2ではその変化は緩やかになりN = 0の場合のHc3(T)に到達する.一方,Hc3はN = 0 ~ 1の場合に観測されたが,Nには依存しなかった.N = 0の場合は表面臨界磁場の関係式(Hc3 = 1.69Hc2)が成り立っているものの,N = 1/4 ~ 2ではこの関係が成り立たないことが分かった.
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