走査型コヒーレントX線回折イメージング(走査型CXDM)とブラッグ回折コヒーレントX線回折イメージング(ブラッグ回折CXDM)を組み合わせた走査型ブラッグCXDMを構築し、転位歪み場のナノスケールイメージングの実証実験を行った。まず、走査型CXDMの測定感度を向上させるために、高光子密度のコヒーレントX線の形成ならびにそれを用いた走査型CXDM用の照明光学系の開発を行った。開口数の大きなX線集光鏡を用いることで、スポットサイズ100nmのX線ビームを形成することに成功した。また、タンタル箔にFIB加工を施すことによって作製した矩形開口アパチャーを空間フィルターとして用いることで、集光鏡に由来するバックグラウンドノイズを除去することに成功した。この照明光学系を用いて、走査型CXDMの測定感度および空間分可能の評価を行った。NTT-AT製のテストチャートの走査型CXDM測定を行った結果、空間分解能17nm、位相感度λ/320を達成した。そして、昨年度開発したブラッグ回折CXDM用の回折計に走査型CXDM装置を組み込み走査型ブラッグ回折CXDMを構築し、Si単結晶薄膜の測定を行った。1um厚さのSi単結晶薄膜に集光したX線を照射し、Si(220)面からのコヒーレントブラッグ回折パターンを測定した。そして、位相回復計算を実行し、Si薄膜のひずみ分布を反映した実空間像を観察領域10um×10um、空間分解能35nmで得ることに成功した。位相分布から二つの転位ループの存在が確認され、その周りでは格子が大きく歪んでいる様子を可視化することに成功した。
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