研究実績の概要 |
各種Al合金の耐孔食性,腐食反応の分極抵抗を電気化学的手法を用いて評価するとともに,Al酸化膜の厚さをrf-GDOESにより調査した。陽極酸化を行っていない裸材では,Al-Cu合金以外は,概ね巨大ひずみ加工により耐孔食性は改善されることが分かった。Al酸化膜の厚さをrf-GDOESにより調査したところ,HPT処理を行なうとAlの酸化膜の形成速度が速くなりことが分かった。また,孔食はFe系,Si系,Al-Cu系等の晶出物の周辺で発生しており,巨大ひずみ加工を行なうと,晶出物が分断され微細なものが増加した。Al-Fe合金の腐食反応の分極抵抗を評価するために,0.1mol・dm-3 のNa2SO4および8.46 mmol・dm-3のNaClを含む溶液中で腐食電位において交流インピーダンスを測定した。何れのFe含有率のAl-Fe合金においてもHPT処理した方がNyquist図の半円の径が大きくなっており,腐食反応の分極抵抗はHPT処理により増加していることが分かった。これらの結果から巨大ひずみ加工によりAl合金の耐孔食性が改善されるのは,Al酸化膜の形成速度が増加すること,およびカソードとして作用する晶出物のサイズが減少することによるものと推察した。 陽極酸化材では,純Al, Al-Mg合金以外はECAP処理により耐孔食性は改善されることが分かった。巨大ひずみ加工を行うと晶出物が微細となることから,耐孔食性は巨大ひずみ加工により晶出物の面積が減少するため改善されると考察した。しかし,Al-Mg合金の場合,ECAP処理により合金の内部応力が増加するため,陽極酸化膜の内部応力も増加し,腐食の際,酸化膜にクラックが生じ易くなる。クラック部での孔食が促進されるため耐孔食性はECAP処理により劣化すると考えられる。
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