研究実績の概要 |
昨年度は、電解液にWO3粒子を懸濁させた電析共析法により、粒径が約40nmの母相ナノ結晶ニッケル中に10nm以下のWO3粒子が分散したナノ粒子分散ナノ結晶ニッケルを合成することに成功した。結晶粒径が同程度のナノ結晶組織を有する純ニッケルよりもビッカース硬度にて100HV程度硬化していたが、析出強化機構(オロワン機構)から推定される硬度上昇には至らなかった。この結果を受けて,今年度は分散粒子径や分散量、母相結晶粒径を系統的に変化させて強化機構を明らかにする予定であったが, 分散粒子の凝集や偏在の問題が解決できなかった. そこで、析出反応系であるNi-P合金を用いて、時効強化による研究を行った。電解液を種々検討することにより、Ni3P析出量を制御しつつ母相ニッケル結晶粒径を10ミクロン程度から100nm以下まで系統的に変化させることが可能になった。その結果は同レベルP含有量について結晶粒径がナノオーダーまで微細化すると析出強化による硬化量がミクロンオーダーの結晶粒径を有する場合に比較して低下することが明らかになった。すなわち、ナノ結晶材料では粒界関与型の変形機構に変化するため、いわゆる転位阻止型の析出機構は有効に作用しないと考えられる。
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