研究領域 | 重い電子系の形成と秩序化 |
研究課題/領域番号 |
23102702
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
中西 良樹 岩手大学, 工学研究科, 准教授 (70322964)
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キーワード | 強相関電子系 / 金属物性 / 磁性 / 低温物性 / 物性実験 / 超音波 |
研究概要 |
量子臨界点近傍(Quantum Critical Point)にある電子状態を、超音波を用いた弾性定数の結果から明らかにした。特に、カゴ状物質PrV_2Al_<20>およびSmV_2Al_<20>、圧力誘起超伝導体CeRh_2Si_2、複雑な磁気相図を有するCeSbの圧力下超音波測定を行った。カゴ状物質については、対称性の高い配位子場環境におかれたゲストイオンの非調和フォノンに起因した弾性異常、および縮重度の高い基底状態にゲストイオンの4f状態があることを明らかにした。取り分けSmV_2Al_<20>は、これまで反強磁性転移であると考えられていた秩序相が、多重極転移(磁気八重極転移)である可能性を指摘し、他のSm化合物の弾性定数の結果と比較しながらその実証を行ってきた。また、この転移が外部磁場に対して極めて鈍感であることを発見し、SmV_2Al_<20>の低温物性を解明する上で重要な知見と示唆を与えた。またCeSbに関しては、これまで常圧下でのみ測定が行われてきた超音波測定を世界に先駆けて初めて静水圧力下で行い、興味深い圧力下の弾性定数を得ることが出来た。常圧下では反強磁性転移温度に向かって弾性定数の軟化(ソフト化)が観測されていた。この弾性定数のソフト化が静水圧を印加するにしたがって顕著になり、転移温度が高温側にシフトしていく結果を得た。この振る舞いはCeSbの低温物性を理解する上で大変重要な機構として提案されているp-f混成効果の妥当性を如実に表すものとなった。静水圧を印加することでSbの5pバンドとCeの4f電子準位のうちΓ_8四重項との混成効果がより一層大きくなり、異常物性を引き起こす。これまでは、その様子がフェルミ面を直接観測する有力な実験手段であるdHvA効果および光電子分光測定でのみ、フェルミ面(伝導バンド)側からしか報告が無かった。超音波実験は局在電子である4f電子準位の立場からp-f混成効果の圧力依存性を議論した最初の研究として位置づけられる。圧力印加によりp-f混成効果が増大し、Ceの4f電子準位の一つである、Γ_8四重項がよりエネルギー的に安定化することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた試料についておおむね順調に実験が進められ、結果も得られている。一軸圧力下超音波測定の研究に関して、装置作りが遅延しているため評価を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは一貫して静水圧力下での超音波測定を推進してきたが、今後は一軸圧力下での超音波測定へと移行し、波動関数の空間分布をはじめ、電子間相互作用、混成効果の空間的異方性に関する有力な情報を得て行く次第である。また一軸圧力下での超音波測定には大きいサイズの単結晶(2mm以上)が必要不可欠である。結晶育成者と密に情報交換しながら、一軸圧力下での超音波測定を推進していく。
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