研究概要 |
本研究課題では、方位を精密制御した磁場中で様々な重い電子系超伝導体の比熱測定を数十mKの極低温まで行い、それぞれの超伝導ギャップにおけるノード構造を決定することを目的としている。平成23年度は、CeIrIn_5、UPt\3、KFe_2As_2、CeRu_2について回転磁場中比熱測定を行い、それぞれの研究結果を国内外の学会や論文で発表した。 特にCeIrIn_5に関しては、C軸を中心に円錐状に回転させた磁場中で比熱の振る舞いがd_<x2-y2>波の超伝導ギャップを仮定した数値計算結果と非常に良く一致することを明らかにし、これまで議論の渦中にあったCeIrIn_5の超伝導対称性を決定づける大きな成果をあげた。CeCoIn_5、CeRhIn_5と並んでCeIrIn_5でもd_<x2-y2>波の対称性が確立されたことは、CeMIn_5系(M=Co,Rh,Ir)の対形成機構が普遍的であることを物語っており、そのメカニズムを理解していく上で重要な手掛かりとなる成果である。本研究成果をまとめた論文は、重要性の高い論文としてPhysical Review B誌のEditors'suggestionに選ばれ、さらにPhysicsのSynopsisにも取り上げられる高い評価を受けた。 本年度は他にも、重い電子系の超伝導を別のアプローチから研究することを目指して、一軸性圧力下で回転磁場中比熱測定が可能な装置の開発にも取り組んだ。本年度は、交流法による比熱測定装置を新たに立ち上げ、比較的断熱条件の悪い環境下でも感度良く比熱を測定することに成功した。来年度は実際に一軸性圧力下での比熱測定を実施していく予定である。
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