研究領域 | 重い電子系の形成と秩序化 |
研究課題/領域番号 |
23102709
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
柳瀬 陽一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70332575)
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キーワード | FFLO超伝導 / スピン三重項超伝導 / スピン軌道相互作用 / 重い電子系 / ルテニウム酸化物 |
研究概要 |
本年度は、以下の3つの研究成果を得た。 1.CeCoIn5において期待される反強磁性量子臨界点近傍のFFLO超伝導相において、反強磁性秩序が起こることを理論的に示し、その磁気構造を調べた。特に、反強磁性FFLO相内において、磁気構造の変化に伴う多重相転移が起こることを示した。 2.最近京都大学において作成されたCeCoIn5とYbCoIn5の人工超格子における新奇な超伝導状態について調べた。この系はCeCoIn5の多層型2次元超伝導体とみなすことができる。多層構造をもつ結晶では一般に「局所的な空間反転対称性」の破れから特有のスピン軌道相互作用が現れることを示し、それが超伝導相の磁気的性質に大きな影響を与え、これまでにないFFLO超伝導相を生み出すことを示した。c軸方向に磁場をかけた場合のFFLO相はPair Density Wave (PDW)相の一種とみなすことができ、ab面内に磁場をかけた場合にはComplex stripe相と呼ばれるFFLO超伝導相が実現される。 3.軌道縮退が残る系では反対称スピン軌道相互作用がこれまでの常識とは異なる構造を持つことを示し、その典型例としてSr2RuO4の[001]界面におけるスピン軌道相互作用を計算した。そこで起こる超伝導状態は通常のラシュバ型スピン三重項超伝導体で期待されるヘリカル状態とは異なるものになる。そのような場合には界面近傍に非ユニタリー超伝導相が現れ、超伝導ボルテックスが自発的に生じることを示した。このような新奇超伝導相がSr2RuO4-Sr3Ru207共晶系において実現されることを議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新しい対称性の破れを伴う新奇超伝導相を研究する本研究課題の遂行の過程で、「局所的な空間反転対称性が破れた系のペア密度波超伝導」という新しい概念が生まれた。この概念は当初の研究計画の段階では存在しなかったものであり、それを発展させることにより、当初の計画以上に研究目的が達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「局所的な空間反転対称性が破れた系の超伝導」の研究を推進するとともに、従来予定していた「混合次元重い電子系」、「強磁性超伝導」、「URu2Si2の隠れた秩序状態において現れる超伝導相」の研究に取り組む。 「混合次元重い電子系」については、強相関効果と共に新しい超伝導構造の可能性を調べる。この研究は冷却原子気体や原子核物理学への波及効果も期待できる。「強磁性超伝導」は特にスピン軌道相互作用の役割に注目した研究を行う。これらの研究を研究グループの大学院生と共に幅広く行うことで、グループ一体となって新奇超伝導の理論研究の発展に取り組む。同時に、海外および他大学の研究グループとの共同研究も推進する予定である。
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