研究領域 | 重い電子系の形成と秩序化 |
研究課題/領域番号 |
23102711
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡崎 竜二 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (50599602)
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キーワード | 重い電子系 / スクッテルダイト / 電場効果 / 金属絶縁体転移 |
研究概要 |
本研究の目的は、金属絶縁体転移を示す希土類スクッテルダイト化合物に対して、電流及び電圧をパラメータとして電子状態を制御し、それらの物質群における低温秩序相の電場に対する応答と金属絶縁体転移の起源を明らかにすることです。 平成23年度は、パルス電圧を用いた低温非線形測定装置および電場下でのSQUID磁化測定装置の開発に成功しました。これらの測定装置により、まずSmRu4P12の絶縁相における非線形伝導の探索を試みました。今回の測定では、この試料の金属絶縁体転移が18K程度と非常に低く、測定装置および試料形状の問題から、実際に印加できる電場の値が非常に小さくなり測定電場の範囲では線形応答を示しました。この結果はしきい電場の最小値の指標を与えます。次年度はまず試料形状の加工によって、より大きな電場を印加できるようにすると同時に測定装置の交換によって非線形性の観察を行います。さらに今回開発を行った電場下での磁化測定装置によって、金属絶縁体転移温度が電場によってどのように変化するかを明らかにします。また平成23年度は強電場印加時における発熱の影響を非接触で調べるため、サーモリフレクタンス法の開発にも取り組みました。実際にモット絶縁体Ca2RuO4ではクライオスタット内で発熱した試料の温度を反射率に含まれるフォノン構造から非接触で決定することに成功しました。次年度は同様の計測を上記のスクッテルダイト化合物へ適応することを試みます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画のように1つのスクッテルダイト化合物の非線形伝導の探索を行うと同時に、(1)電場下での磁化測定装置の開発と(2)低温で非接触で温度計測可能なサーモリフレクタンス法の開発を行うことができた。これらの手法により転移温度の電場依存性やジュール発熱による温度上昇効果を評価でき、希土類化合物における本質的な電場効果を探索する上で重要な研究手法の開発に成功したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
SmRu4P12の測定を継続するとともに、低温でより電気抵抗の大きなPrRu4P12の非線形伝導の確認を行い、これら2つのスクッテルダイト化合物における非線形性の違いについて議論する。また新しく開発した電場下磁化測定法やサーモリフレクタンス法を実際に希土類化合物に適応することを試みる。
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