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2011 年度 実績報告書

重い電子系におけるスピン軌道相互作用と電子相関効果の絡み合いによる新奇物性の研究

公募研究

研究領域重い電子系の形成と秩序化
研究課題/領域番号 23102714
研究機関京都大学

研究代表者

藤本 聡  京都大学, 理学研究科, 准教授 (10263063)

キーワード超伝導 / 電子相関 / スピン軌道相互作用 / 強磁性 / トポロジカル絶縁体
研究概要

本年度は以下の研究を行った。(1)強磁性超伝導体UCoGeにおける超伝導発現機構を微視的に解明した。計画班の石田憲二教授(京大理)のMR実験グループと共同で行った研究により、この系ではイジング的な強磁性スピン揺らぎが媒介する引力によってクーパー対が形成されており、非ユニタリーなスピン3重項超伝導が実現していることが明らかにな弓た。今回の研究成果は、NMR実験のデータからスピン揺らぎをモデル化し、それに基づく微視的計算によって、超伝導物性がよく再現できることを示したものである。これまでにも強磁性と共存する超伝導体は知られており、スピン揺らぎによる超伝導発現の可能性は議論されていたが、直接的な証拠は得られていなかった。今回の研究成果は、スピン揺らぎによるスピン3重項超伝導発現機構を世界で初めて確証した揺るぎないものである。(2)URu2Si2の隠れた秩序が何であるかを解明する研究を行った。母近の実験・理論から示唆されているように、遍歴f電子のバンドのネスティングによって引き起こされる相転移が隠れた秩序状態を生み出している可能性が高い。この描像に基づいた解析と、最近の磁気トルクめ実験結果から、我々はスピン・ネマティック状態が隠れた秩序として実現しているというシナリオを提唱してきた。平均場に基づく解析が、このシナリオがこれまで謎であった多くの中性子実験の結果や、STM等の1電子スペクトルの実験結果をよく説明することを明らかにした。特に中性子実験では、隠れた秩序相で2種類のスピン励起が存在し、その性質、スピン励起エネルギーギャップの違いなどが、どのようなモデルで説明できるのかが、これまで十分に検討されていなかったが、今回の我々の研究によって、1電子スペクトルのギャップの波数空間での異方性が、これらの実験事実を説明する上で重要であることが明らかにされた。それによって、上述のスピン・ネマティク・シナリオが有望であることが示された。(3)スピン軌道相互作用のある強相関電子系におけるトポロジカル絶縁体の実現と、それの電子間相互作用に対する安定性、磁気秩序状態をトポロジカル相との競合、共存について研究を行った。電子相関が強くなるとトポロジカル絶縁体からモット絶縁体への1次転移が起こることが明らかになった。噛また、反強磁性磁気秩序相とトポロジカル絶縁体が共存できる可能性を示唆する結果を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

交付申請書に記載した3つの研究目的の内、2つ(強磁性超伝導体UCoGeの研究、URu2Si2の隠れた秩序の研究)は当初の計画以上に進展している。他方、交付申請書記載のCeRhSi3,CelrSi3の研究についても、スピン軌道相互作用と量子臨界揺らぎ近傍での強結合効果との絡み合いによるトポロジカル秩序、マヨラナ・フェルミオンの実現の可能性について結果が得られつづあり、今後、研究結果をまとめていく予定である。

今後の研究の推進方策

各テーマについて以下のように進めていく。(1)強磁性超伝導体UCoGeについては、ほぼ当初の目的を達成しているが、最近の中性子実験から得られたスピン励起のスペクトルを考慮してより定量的に詳細な解析を進め、本研究を完成させる。(2)URu2Si2の隠れた秩序状態の研究についてはより現実的な多軌道バンドモデルに基づく解析を進める必要があり、今後これを進めていく。また、これまでにも議論されてきたスピン帯磁率の強いイジング異方性が遍歴f-電子の描像でも理解できることをモデル計算で示す。(3)反転対称性のない重い電子系超伝導体CeRhSi3,CeIrSi3におけるトポロジカル秩序、マヨラナ・フニルミオンの実現の可能性についてこれまでの成果をまとめていく。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] Superconductivity Induced by Longitudinal Ferromagnet ic Fluctuations in UCoGe2012

    • 著者名/発表者名
      T.Hattori, Y.Ihara, Y.Nakai, K.Ishida, Y.Tada, S.Fujimoto, N.Kawakami, E.Osaki, K.Deguchi, N.K.Sato, I.Satoh
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 108 ページ: 066403-1-066403-4

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.108.066403

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Green's function method for line defects and gapless modes in topological insulators : Beyond the semiclassical approach2012

    • 著者名/発表者名
      K.Shiozaki, S.Fujimoto
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 85 ページ: 085409-1-085409-12

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.85.085409

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Correlation effects on a topological insulator at finite temperatures2012

    • 著者名/発表者名
      T.Yoshida, S.Fujimoto, N.Kawakami
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 85 ページ: 125113-1-125113-6

    • DOI

      10.1103.PhysRevB.85.125113

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Spin Nematic State as a Candidate of the Hidden Order Phase of URu2Si22011

    • 著者名/発表者名
      S.Fujimoto
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 106 ページ: 196407-1-196407-4

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.106.196407

    • 査読あり
  • [学会発表] Topological Phases in Correlated Electron Systems2011

    • 著者名/発表者名
      S.Fujimoto
    • 学会等名
      Novel Quantum States in Condensed Matter 2011
    • 発表場所
      京都(招侍講演)
    • 年月日
      2011-12-02
  • [学会発表] ime-reversal and Inversion Symmetries in Topological Superconductors2011

    • 著者名/発表者名
      S.Fujimoto
    • 学会等名
      24th International Symposium on Superconductivity
    • 発表場所
      東京(招待講演)
    • 年月日
      2011-10-25
  • [学会発表] URu2Si2の隠れか秩序状態のスピンネマティックシナリオ2011

    • 著者名/発表者名
      藤本聡
    • 学会等名
      日本物理学会2011年秋季大会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      2011-09-24
  • [学会発表] UCoGeにおける強磁性ゆらぎとクーパー対形成機構2011

    • 著者名/発表者名
      藤本聡
    • 学会等名
      日本物理学会2011年秋季大会
    • 発表場所
      富山(招待講演)
    • 年月日
      2011-09-23
  • [学会発表] Spin Nematic Scenario for the Hidden Order Phase of uRu2Si22011

    • 著者名/発表者名
      S.Fujimoto
    • 学会等名
      SCES2011
    • 発表場所
      英国、ケンブリッジ(招待講演)
    • 年月日
      2011-08-30
  • [図書] Non-centrosymmetric superconductors (Chapter 6 Microscopic Theory of Pairing Mechanisms)2012

    • 著者名/発表者名
      Y.Yanas, S.Fujimoto
    • 総ページ数
      39
    • 出版者
      Springer
  • [図書] Non-centrosymmetric superconductors (chapter 8 Aspects of Spintronics)2012

    • 著者名/発表者名
      S.Fujimoto, S.K.Yip
    • 総ページ数
      20
    • 出版者
      Springer
  • [図書] 別冊数理科学「量子多体系の物理」2011

    • 著者名/発表者名
      藤本聡, 川上則雄
    • 総ページ数
      184
    • 出版者
      サイエンス社

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公開日: 2013-06-26  

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