研究概要 |
本研究は、重い電子系における"量子臨界点"に着目し、低温高圧下核磁気共鳴(NMR)/核四重極共鳴(NQR)測定を通じて量子臨界点近傍で起こる新奇ギャップレス超伝導相の超伝導電子対の対称性を明らかにし、この新奇超伝導相を通じて重い電子超伝導発現機構を明らかにすることを目的としている。本年度の研究成果は以下の通り。 重い電子系反強磁性超伝導体CeRh_<0.5>Ir_<0.5>In_5(T_N=3.0K,T_c=0.9K)において、低温高圧下(0.3K<T<100K,P=0.095,1.80,2.24,2.53GPa)でのIn-NQRスピン格子緩和時間(T_1)の測定を行った。 1.超伝導転移温度 NQRコイルを用いた交流帯磁率測定によって各圧力での超伝導転移温度T_cを決定し、CeRh_<0.5>Ir_<0.5>In_5の圧力-温度相図を明らかにした。 2.常伝導状態 T_c以上の1/T_1Tの温度依存性を反強磁性スピン揺らぎの理論で解析することにより、CeRh_<0.5>Ir_<0.5>In_5の量子臨界点がP_c~1.3GPaであることが明らかにした。またP_cでT_cが最高になることもわかった。 3.超伝導状態 T_c以下の1/T_1の温度依存性より、十分低温で全ての圧力においてギャップレス超伝導が実現していることを明らかにした。ギャップレスの指標である、超伝導ギャップ内の残留状態密度の大きさは、圧力に依存し、P_cで最大値をとることがわかった。 以上の結果から、重い電子系反強磁性超伝導体CeRh_<0.5>Ir_<0.5>In_5では量子臨界点近傍で反強磁性スピン揺らぎがT_cの増大に関与し、さらにその超伝導状態はギャップレス超伝導状態で最適化されているという、これまでにない全く新しい超伝導状態が実現している可能性を強く示唆する結果を得た。
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