研究実績の概要 |
本研究の目的は高い対称性と籠構造を持つ物質に生じる物性を微視的な視点から明らかにすることであり、研究期間内に以下の研究成果が得られた。 Aサイト秩序型ペロブスカイト化合物ACu3Ru4O12(A = La, Nd, Pr)についてCu核の核四重極共鳴(NQR)を行った。4f電子を持たないLaCu3Ru4O12の電子状態は通常金属と同様な状態であるのに対し、4f電子を有するNdCu3Ru4O12では4f電子間の強い相関により顕著なスピン揺らぎが発達し、約0.6Kで磁気転移を示すことが明らかにした。また、PrCu3Ru4O12については局在的な4f2電子による揺らぎが極低温領域まで存在し、測定範囲内で秩序化しないことを明らかにした。LaCu3Ru4O12についてはLa核の核磁気共鳴(NMR)を行い、ナイトシフトを測定した。ナイトシフトはキュリーワイス則に従うような温度変化を示し、LaCu3Ru4O12においても弱い磁気相関が存在することを明らかにした。 充填スクッテルダイト化合物CeOs4Sb12、CeT4Sb12(T = Ru, Os)のSb-NQRを行い、核四重極周波数および非対称パラメータの温度変化を詳細に調べ、カゴ構造に起因した特異な振る舞いを明らかにした。CeOs4Sb12については、上記パラメータを用いたSb-NMRスペクトルの解析により精密なナイトシフトを求めた。その結果、スピン磁化率は温度が下がると共に増大を示し、磁気相関が存在することを明らかにした。 高圧合成法により作成されたCeT4As12(T = Fe, Ru, Os)についてAs-NQRを行いその電子状態を明らかにした。特筆すべきはCeRu4As12においてCeRu4Sb12に類似した顕著な1/T1Tの増大が観測され、これはCeの価数の揺らぎよる量子臨界現象で有る可能性が高い事を示した。
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