本年度はCeRhSi3の磁気励起を観測するため,フランス・ILL研究所にて中性子散乱実験による研究を進めた.CeRhSi3の磁気構造はa軸方向を向くLSDW構造であることは分かっていたが,磁気モーメントの大きさが0.1μB程度と小さいために,これまで観測は難しかった.そこで,東大物性研の高エネルギーX線透過ラウエ装置を用いて,8つの大型単結晶試料の方位を揃えたものを用意できた.(合計約2.4グラム)ILL-IN14装置では,多チャンネル検出器のFlatConeオプションを用いて効率よく実験を進め,初めて磁気励起の観測に成功した.T=80mKにおける非弾性散乱エネルギー0.6meVに固定した波数空間のマッピングからは,磁気反射の波数から僅かにずれた位置を中心に幅の広いピーク構造が観測された.但し,c*方向には波数依存性が観測されずa-b面内の二次元的特徴をもつ磁気励起であることが分かった.今後,エネルギースペクトルやより広い温度範囲での研究が望まれる. また,単結晶試料CeRhSi3の熱電能の研究を進め,約3GPaまでの圧力で,熱流方向をa軸とした場合とc軸とした場合の両方向の測定を行った.低温から室温までは概して正の係数を示し,温度依存性には近藤効果に対応する単一ピーク構造が見られる.0圧力では100K程度に,3GPaでは130K程度にピーク中心があり,軸方向に寄らず圧力とともに単調に増大することが分かった.なお,低温での熱電能の絶対値は,軸方向により異方性が見られた.c軸では顕著な圧力依存性は無かったが,a軸では圧力とともに熱電能が増大した.これらの変化と量子臨界性との理解が今後の課題である.
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