研究実績の概要 |
1.ウランカルコゲナイド化合物。b-US2,USeS, UTeS 我々は、大きな軌道角運動量及びスピン軌道相互作用で特徴付けられるウランイオンを、伝導キャリアの希薄な系に置いたとき、新奇な現象が現れることを期待し、少数キャリア系ウランダイカルコゲナイド化合物UTS(T: S, Se,Te)について高圧研究を行った。β-US2は狭いバンドギャップ(~90 K)をもつ半導体であり、USeS, UTeSは転移温度24, 98 Kを持つ強磁性半金属である。この系は、大きな負の磁気抵抗効果が特徴的で、β-US2の場合、7 Tで6桁にも及び、マンガン酸化物と同程度である。β-US2は常圧では非磁性で、少し圧力(~0.7 GPa)を加えると、弱い強磁性状態が誘起される。圧力誘起相は、単重項基底状態と励起状態が混じり合い、磁性が誘起される“Induced moment ferromagnetism”の枠組みで理解できることが、すでに明らかにされている。今年度はβ-US2についてより高い圧力まで研究を進めた。その結果、5 GPa前後で、系は絶縁体から金属に転移し、自発磁化の大きさも急激に増大することが明らかにされた。この系の磁性状態は系の伝導キャリアの濃度で整理されることが示唆され、この系の統一的理解に向けたモデル構築が行われた。 2.希土類化合物YbCu2Si2の圧力誘起秩序相。 YbCu2Si2は常圧では非磁性の重い電子系化合物として古くから研究が行われてきた。過去の高圧下交流磁化測定などから、8 GPa以上で磁気的な秩序相が誘起されることが指摘された。しかし、その磁気特性などは不明であった。我々は、平成22年度に開発したセラミックアンビルセルを用いてYbCu2Si2について高圧下磁化測定を行った。10.5 GPaの圧力下で強い一軸異方性をもつ強磁性状態が誘起されることを明らかにした。
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