研究領域 | 対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象 |
研究課題/領域番号 |
23103502
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
福井 隆裕 茨城大学, 理学部, 教授 (10322009)
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キーワード | トポロジカル指数 / 解析的指数 / 指数定理 / カラー超伝導 / 非可換渦糸 / ペリーの位相 / マヨラナ・フェルミオン / ディラック・フェルミオン |
研究概要 |
本研究は、ギャップの開いたバルクな物質の持つトポロジカルな性質と、その物質に欠陥を導入した際に現れるゼロ・モードの関係を指数定理という強力な数学的手法を用いて明らかにすることを目的としている。 まず、最初に、クォーク物質に現れると期待されるカラー超伝導における非可換渦糸の周りに現れるゼロ・モードの問題に対して指数定理を適用した。この系は、極めて複雑なため簡単な計算ではないが、トポロジカル指数を導くことに成功した。単純なディラック・フェルミオンでない場合に計算したまれな例と考えている。この計算によって、非可換渦糸の周りのゼロ・モードの個数が明らかになった。 指数定理とは「微分方程式を解いて得られるゼロ・モードの個数という言わば解析的指数と、秩序点数などの場のトポロジカルな配位という言わばトポロジカル指数が一致する」ことを主張している。ところで、Teo-Kaneによって、ベリーの位相を用いたトポロジカル指数の計算が提案されているが、彼らはこれが証明することは無しに解析的指数と一致すると主張している。我々はこれが本当に成り立つかどうかを任意の次元における点欠陥模型を用いて調べた。我々の指数定理と矛盾する結果が得られ、ベリーの位相による計算は、必ずしも正しいトポロジカル指数を与えないことを示した。 ここまではディラック・フェルミオンに対する指数定理であるが、この他にマヨラナ・フェルミオンからなる正方格子模型を新しく提案し、そこにZ2渦糸を導入した場合に現れるゼロ・エネルギー状態が本当に存在することを指数定理を用いて証明した。 その他、ヘテロ構造を持つ系に対する指数定理の応用、また、任意の次元で非可換ゲージポテンシャルを持ったディラック・フェルミオン模型に対する指数定理などを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な系に対して指数定理を応用して新しい結果を出すことが出来た。特に、カラー超伝導の非可換渦糸の周りのゼロ・モードの研究は、新しい良い結果だと判断される。現在投稿中の論文が2本あるが、これが既に出版済みとなっていれば、(1)となっていたと思う。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿中の論文は、超伝導・トポロジカル絶縁体・強磁性体等のヘテロ構造を持った系に対する指数定理の応用であるが、これが極めて興味深いことが認識されつつある。言葉を換えると、以前までは渦糸や点欠陥などの「丸い形状」の秩序変数のもとのゼロ・モードを念頭に置いてきたが、これからは、より一般的な任意の形状の系を対象に指数定理を応用していくことが出来る。従って、バルク・エッジ対応やその他の問題へも拡張できる可能性もある。当面はこの新しい課題に集中的に取り組み、同時に、当初の研究計画の課題を成し遂げるためのアイディアを練っていきたい。
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