研究概要 |
Sr_2RuO_4と析出相の界面において,本来の超伝導相(1.5K 相)の他に,超伝導転移温度が約3Kの超伝導(3K 相)が生じることが知られていたが,3K 相の体積分率はc軸方向の一軸応力によって劇的に増大する一方,1.5K 相の超伝導転移温度は,一軸応力によって減少することが明らかになった.磁場をc軸に垂直に印加した場合,磁歪により,c軸方向に縮むことが考えられるため,高磁場において1.5K 相と3K 相のスイッチが起こり,これが超伝導二段転移の起源となっている可能性が考えられる.本申請では,上記の観点から,(i)緩和法による比熱測定などを行い,低温高磁場超伝導相への転移の次数を決定し,(ii)一軸応力下比熱測定などによって低温高磁場超伝導相の振る舞いがどのように変化するかを調べ,(iii)磁歪測定により,磁場下でのc/aを見積もり,超伝導と格子とのカップリングの関係を明らかにする. 連携研究者である茨城大学理学部准教授横山淳所有の無冷媒冷凍機に設備備品費で申請した1Kポットシステムを加え,到達最低温度を2K以下にするよう改造を行った.現在試運転の段階である.また,磁歪測定セル,一軸応力下測定を行うのに必要な一軸応力セルの試作を行っている.c軸に垂直に磁場を印加し,特に上部臨界磁場直下で起こるもう一段の超伝導転移近傍の磁場・温度領域において,精密比熱測定を行い,比熱のとびの大きさ,潜熱の有無などを詳細に調べ,この転移の次数を確定させる予定であったが,磁気トルク測定により,転移の次数が1次であることがわかったので,現在トルク測定を中心に行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sr_2RuO_4のスピン三重項超伝導状態における,低温領域での上部臨界磁場直下で起こる高磁場超伝導相とそれより低磁場での混合状態相との間の転移の次数が1次であることを確かめることができた.また,圧力実験に関しては,SQUIDによる圧力静水圧下の磁化測定を行ない,研究を遂行している.
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