研究概要 |
本研究は,量子縮退しな冷却イッテルビウム原子を2次元の異方性光格子に閉じ込め,光誘起トンネリングと呼ばれる現象を用いて,光格子ブラケット1周当り2πaに(ここでaは任意の実定数)のグローバル位相を与えて実効的なゲージ場を創生することであった. 本年度は,イッテルビウム原子を安定的に生成するために実験装置の改良を行い,2次元光格子に原子をロードすることに成功した.まず,冷却原子を捕獲するチャンバーと量子縮退を実現するガラスセルの2つの領域からなる超高真空装置を準備した.実験の第一段階は磁気光学トラップと呼ばれる手法で原子をレーザー冷却し,チャンバー部分で捕獲する.これを光ピンセットと呼ばれる手法で30cm程離れたガラスセルに輸送し,蒸発冷却によって量子縮退原子を実現した.その後,鉛直方向に原子を閉じ込めるために2本の補助レーザー光を浅い角度で交差させ,長周期の鉛直光格子ポテンシャルに原子をロードすることができた.原子がきちんと鉛直方向光格子の1層のみにトラップさせているかどうかはTime of flight法によって自由落下する原子の拡散パターンを観測することで確認した.最後に水平2次元平面内で短周期の光格子を形成するために,2組の対向するレーザー光を準備し,それらを原子の位置で注意深く重ねて格子定数266nmの2次元光格子を形成した.この鉛直方向の長周期光格子と水平面内の短周期光格子の組み合わせにより量子縮退した原子は実質的に水平面内のみの2次元光格子中にロードされる.この面内では原子が多数の格子サイトに捕獲されるため自由落ドにより格子定数の逆数の波数を持つ運動量ピークを生じることが確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は2次元光格子中にロードした原子に対して光誘起ゲージ場を発生させる実験に着手する。まずゲージ場発生用のレーザー光源(波長405nm)を市販の半導体レーザー素子を用いて準備する.これを水平面内の光格子ビームと重ねあわせ,原子に照射する.この際,計4本のレーザー光の周波数は全て独立に制御する必要があり,これを正確に実行するためのコンピュータ制御システムを構築する.生成されたゲージ場は原子のTime of flightパターンによって確認する.このパターンはゲージ場の空間分布に依存して単なる2次元光格子とは異なる運動量ピークを作り出すことが予想されており,これを実験・理論の両面から検証することで原子系のゲージ場中でのダイナミクスを検証する.
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