研究領域 | 対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象 |
研究課題/領域番号 |
23103511
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井村 健一郎 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (90391870)
|
キーワード | トポロジカル絶縁体 / Berry位相 / メゾスコピック効果 |
研究概要 |
ギャップのある/ないトポロジカル相における"spin-to-surfacelocking"の発現機構とその重要な物理的帰結に関して研究を行った。トポロジカル絶縁体表面に現れるヘリカルDiracコーンは、その存在がトポロジカル絶縁体を自明な絶縁体と区別するだけでなく、スピン状態が試料表面の各点で接平面内にロックされるという特徴的な性質を持つ(spin-to-surface locking)。このことの数学的な表現が大きさπのスピンBerry位相である。現実的な有限サイズのトポロジカル絶縁体では、「ギャップレスの」表面状態と言えども有限サイズ効果での系の大きさに依存する小さなギャップが開いている。通常この有限サイズギャップの系の大きさの関数として指数関数的に小さくなっていくため実質的に無視できるが、スピンBerry位相πが効くともはやその限りではなく、有限サイズギャップの大きさの系の大きさの関数として代数的にしか減衰しない。例えば円筒状試料の表面状態において、スピンBerry位相πの存在は円筒の軸に沿った「軌道」角運動量が半整数に量子化されることを意味する。我々はまたこのことのより具体的な帰結として、結晶転移に沿ったギャップレスの1次元ヘリカル状態ができることを予言した。 一方、パイロクロア型イリジウム酸化物等において、その実装が示唆されている3次元版ワイル半金属は、グラフェンの3次元版とも言うべき存在である。例えば、グラフェンナノリボンの藤田状態に相当する表面状態(フェルミアーク表面状態)が、系をスラブ状にして表面を導入することで現れる。このフェルミアーク表面状態が、一方でトポロジカル絶縁体表面に現れるヘリカル表面ディラック状態に類似した性質=スピンベリー位相を呈することを予言し、その物理的帰結として平坦なエネルギー分散を持ったサブバンドの振る舞いを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ギャップのある/ないトポロジカル相における"spin-to-surface locking"の発現機構について、当初の予想以上の成果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで、ねじれ(torsion)はあるが曲率のない、例えば円筒状のトポロジカル相についてその表面状態の解析を進めてきた。今後は、球面のように実質的な曲率もある曲面上におけるスピン接続と"spin-to-surface locking"について明らかにしていきたい。
|