| 研究実績の概要 |
本年度は、時間反転対称性の破れた超伝導状態を持つ可能性のある物質として、UPt3, URu2Si2を対象とし、s波超伝導体との間のジョセフソン効果を通じて、秩序変数の検討を行った。UPt3については、秩序変数の候補として、主に欧米のグループで主張されているE2u状態では時間反転対称性が破れているのに対し、最近提案されたE1u状態では破れていない。昨年の研究で、UPt3単結晶のa軸, b軸, c軸方向についてジョセフソン効果が観察され、3方向でジョセフソン効果が禁止されるE2u状態とは矛盾する結果が得られていた。一方、E1u状態では六方晶の３本のb軸のうち特別なb*軸方向のみ禁止されるはずであるので、本年度は別の結晶のb軸方向で測定を行ったところ、非常に小さな臨界電流しか見られないことがわかった。従ってこの結晶のb軸はb*軸に相当している可能性があるが、今後さらに再現性を確認する必要がある。また、a軸方向の素子に圧力をかけて測定したところ、圧力下でも磁場特性が変化しないことが確認された。従って、これまで高磁場下で出現するため測定できなかった超伝導C相についても、圧力下で出現させることでジョセフソン効果の研究が可能であることが確認できた。
一方、URu2Si2についてはより小さな接合で測定し、単結晶のa軸方向では一様なジョセフソン電流が流れにくいものの、ジョセフソン効果は禁止されていないことが明らかになった。従って、昨年度に得られたc軸方向の結果も含めて、時間反転対称性の破れたEg状態の秩序変数では説明できないことが明らかになった。
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