研究概要 |
本研究では、空間反転対称性の欠如した物質をキーワードとして、p電子系、f電子系化合物を対象とした新規超伝導物質開発を行った。今年度はこれらの中でp電子系化合物を中心として研究を行ってきた。 ・遷移金属を内包したGaによるかご状構造を有する二元素系化合物TMGa5(TM=Ni,Pd)の純良試料の合成に成功し、それぞれTc=3.5K,2.3Kの新規超伝導体であることを発見した。更に、バンド計算による状態密度の評価から、これらの超伝導体はGaのかごが物性に重要な役割を担っており、NiGa5,PdGa5におけるTcの違いは内包される遷移金属のd軌道の寄与の差に起因することを明らかにした。また、構造パラメータの評価から超伝導特性向上への指針を得た。 ・層状構造を有するCr2AlC型新規三元素系炭化物Lu2SnCの合成に成功し、Tc=5Kの新規超伝導体であることを発見した。更に、バンド計算による状態密度の評価から、フェルミ面近傍ではC元素の寄与が大きいため、この系における超伝導発現にはCが重要な役割を担っていることを明らかにした。また、同様のCr2AlC型構造の化合物M2SnC(M=Ti,Zr,Hf,Nb)と構造パラメータ、物性、状態密度の観点から比較を行うことによって、これらの系における超伝導の誘起や超伝導特性の向上への指針を得た。 ・結晶構造中にCダイマー、Cトリマーという特徴的な共有結合性ネットワークを有するS3C4に対し、CサイトへのB置換を行うことによって、Tc=7-8Kの超伝導が発現することを見出した。更に、CサイトへGeを置換した化合物に置いても、同様の超伝導が発現することを見出した。
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