研究概要 |
本研究では,地球マントル物質中にプロトンが存在することにより,地球マントル物質の弾性的性質と地震学的不連続面に相当する圧力誘起結晶構造相転移にどのような変化が現れるかについて,第一原理計算を用いた検討を進めている.そのような第一原理計算を効率よく実施するためには,専用の並列計算機が必要不可欠であり,まずその環境の整備として,量新のIntel製CPU(Core i7-2600K)を搭載した計算機11台をパーツから組み立てる形で構築し,並列計算機を準備した.その並列計算機を用いた具体的な第一原理計算としては,地球上部マントルの主成分と考えられているforsterite(α相),wadleyite(β相),ringwoodite(γ相)という上部マントルの浅部から深部へ向かう3種の異なる結晶構造を持つMg2SiO4にプロトンを添加したモデルを構築し,地球上部マントル環境下に相当する高圧下においてプロトンがどのような存在形態,すなわち高圧下における欠陥形成のメカニズムを検討した.また,これらの計算で得られた欠陥構造に対して,プロトンが含まれることによる弾性的性質の変化及び相転移圧力について評価を行った.プロトン含有により上記のすべての相のMg2SiO4の体積圧縮率が大きく変化することが示され,すでに報告のある実験結果を良く再現することができた.これまでに行った結果の一部について,地球惑星連合2012年大会にて発表予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
2011年度に行った地球マントルの主成分であるMgシリケートよりも更に地球マントルの実在の状況に近い環境を考えるために,Mgシリケートに地球マントル中に含まれると考えられている他の元素を添加したモデルを構築し,それらの物質における欠陥形成機構を第一原理計算により検討する.添加する元素としては,Fe,Al,Caなど地球マントル中における存在比が高いと考えられている元素を添加したモデルから計算を進める.これらのマントル成分に近い多成分系へのプロトンの影響について精緻な第一原理計算を行い,その影響を検討する.
|