研究領域 | 高温高圧中性子実験で拓く地球の物質科学 |
研究課題/領域番号 |
23103706
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
中野 智志 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端材料プロセスユニット, 主幹研究員 (50343869)
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キーワード | 二水素結合 / 高温高圧 / 中性子回折 / 構造解析 |
研究概要 |
本研究では、J-PARCの高温高圧中性子回折ビームラインを用いて、構造中の結晶水が二水素結合を形成する水素化物や比較物質の精密構造解析を行い、高温高圧下における結晶水と二水素結合の挙動、それが物質の構造や反応性に与える影響を明らかにし、水素が生み出す未知なる物質ダイナミクスの解明に寄与することを目的としている。 しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響により、J-PARCでの高圧中性子回折実験が全くできなかった。そのため予備実験として、高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設(KEK-PF)の高圧ビームラインで、結晶水を持たない二水素結合物質であるNH_3BH_3およびND_3BD_3の高圧X線回折実験を行った。 NH_3BH_3は約50GPaまで室温高圧実験を行った。従来報告されていた圧力誘起相転移のほかにも相転移と思われる構造変化を確認し、さらに高圧でのアモルファス化を初めて観測した。これは、高温高圧下で未知の新たな構造があることを示唆している。中性子回折実験で使用するND_3BD_3も同様の実験を行い、基本的に同じ結果を得た。水素や水の高圧相図は同位体効果があり相転移の温度・圧力条件が異なるが、NH_3BH_3についてはその影響は考慮する必要がないことが明らかになった。実験手法上の知見としては、NH_3BH_3は微細試料を得るのが簡単ではなく、リードベルト解析に耐え得る回折リングターンを得ることが困難だった。これは、試料の量がはるかに多くなるとはいえ、中性子回折実験に際しても起こりうる問題であり、十分な試料調整が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中性子回折実験に全く着手できなかったことにより、全体の進行が遅れている。しかし、X線回折による予備実験は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
J-PARCでの中性子回折実験が可能になるまでに、X線回折による予備実験を完了させるとともに、結晶水を持つ二水素結合物質NaBH_4・2H_2Oの実験を優先する。高圧中性子回折ビームライン「PLANET」以外での高圧中性子回折実験の可能性を探る。
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