研究領域 | コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
23104503
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
矢花 一浩 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70192789)
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キーワード | 時間依存密度汎関数法 / 高強度パルスレーザー / マルチスケール計算 / 第一原理計算 / シミュレーション |
研究概要 |
本研究は、超短パルス光と物質の相互作用を第一原理計算により記述する汎用のシミュレーション法を開発することを目的としている。光が物質に照射する際の光電磁場のダイナミクスは、通常はマクスウェル方程式により記述され、光と物質の相互作用は振動数を変数に持つ誘電率を用いて採り入れられる。ところが最近の光科学のフロンティアでは、この振動数を変数に持つ誘電率では記述することができない状況下での発展が著しい。 本計画では、光と物質の相互作用を記述する汎用のシミュレーション法を開発することを目的としている。光電場の強度が大きく電子ダイナミクスの非線形性が著しくなると、もはや電子のダイナミクスに対して量子力学の摂動論を用いることができなくなり、マクスウェル方程式と時間依存シュレディンガー方程式を結合して解くことが必要になる。一方、両者を結合する場合には、光の波長のスケール(μm)と電子ダイナミクスの空間スケール(nm以下)が大きく異なるため、マルチスケールによる記述が必要とされることに注意が必要である。 本年は、電子ダイナミクスに対して時間依存密度汎関数理論を用い、時間依存コーン・シャム方程式とマクスウェル方程式を結合した基本的な枠組みの構築を行い、Si結晶に直線偏光が垂直入射するという最も単純な場合について数値計算を遂行し、文献[1]にまとめた。これにより、高強度パルス光と物質の相互作用を記述する第一原理計算への道が開かれ、様々な非線形光応答を定量的に解明する基礎を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、理論的枠組みの整備と、基本的な計算コードの作成を予定していたが、それらについてまとめた論文を作成し、出版することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の推進については、当初の計画に沿い順調に進展していることから今後も計画に沿い進展させる。次年度においては、理論面においては真電荷のある場合の扱い、及び軌道磁化の取り扱いに関して考察するとともに、計算面では巨視的電磁場が2次元的になる場合の計算コードを完成させる。さらに、より定量的な記述を目指して汎関数の改善を検討する。
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