研究概要 |
遷移金属酸化物は、室温を大きく超える強磁性、非常に巨大な強誘電性など、巨大物性を示す魅力的な物質材料群である。しかし、微細加工が非常に困難であり、未だ薄膜デバイス形成に留まっている。この問題に対し、自らが見出した室温を遥かに超える転移温度を有する強磁性半導体(Fe,Zn)_3O_4および巨大な自発電気分極を有するBiFeO_3を対象とし、自己組織化酸化物ナノ相分離成長により強誘電体ピラー/強磁性半導体ナノ超構造体を実現し、今までにない新たな酸化物ナノ構造形成を実証した[T.Sakamoto,H.Tanaka et al,Jpn.J.Appl.Phys.51,035504(2012).]。さらに、第一原理マテリアルデザインと実験の融合の元、強磁性半導体相が強誘電体相で取り囲まれた電界効果トランジスタ構造となるようナノ相分離成長をより一層高度化させ、種結晶を配置した基板上において逐次相分離成長させることにより、強磁性半導体(Fe,Zn)_3O_4ナノピラーが強誘電体BiFeO_3中に埋め込まれた3次元ナノヘテロ構造体の作製に成功した。このナノ構造作製を通じ、種結晶配置の制御により自然発生的であった自己組織化ナノ相分離成長を人工的に制御できることを実験的に初めて明らかにし、従来では微細加工が非常に困難であった遷移金属酸化物に対して新たなナノ構造形成法を確立した。作製に成功した(Fe,Zn)_3O_4BiFeO_33次元ナノヘテロ構造体は、特にスピントロニクス分野においては、微小な電界により室温でスピンスイッチングを可能としスピンデバイスの低消費電力動作が可能と予測され、情報化社会に大きな意義を有するものである。
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